ここは美しい森と泉をたたえたアルモンド国。
この国で起きたお后と父親違いの兄弟の
王子達の悲恋の物語のはじまりです。
     

       1  章

   1、結婚式の朝(お城の門)
その日は早朝から、門番や女中達が慌しく
城の大掃除に追われていました。

普段は開くことのない開かずの門です。
さびついた鉄のきしむ音を立てながら、
大勢の門番達が力を合わせて重い扉は
ギィィーと音を立てながら開かれていき、
朝日が城の中に差し込んできました。

さて、今夜は、これからこの国の王子ゴローと
お后になられる隣国のウルスラ姫との結婚式が
執り行われようとしており、女中や門番達も、
慌しい中にも心が躍るような思いで、その準備に
取りかかっておりました。
  
        2、森での出逢い
 
アルモンド国の若き王子ゴローは、今夜はこれから
結婚式というのに、ウルスラ姫を迎える準備をするでもなく、
早朝から、イノシシ狩りをするために、猟犬を連れて森へと

向かいました。

ゴローは、どんどんと奥の方までイノシシを追っている
うちに猟犬ともはぐれてしまい、血の跡を探しながら
いったん、来た道を戻り森から出るか、奥へ進むかと
迷いながら歩いていました。

泉のほとりまでやってくると、そこに一人の娘が
ずっと、すすり泣いていました。木陰に隠れて
その様子を見ているのですが、一向に泣きやむ
様子がありません。
エヘンとせき払いをして、娘を振り向かせました。

「何をそんなに泣いているんですか」

「近寄らないで下さい。これ以上、近寄ったら
その泉に飛び込みますから」

誰かに苛められでもしたのかと、ゴローは尋ねました。
すると、彼女は大勢の人々から苛められて、
遠い、よその国からこの国に逃れ、気がついたら
この森にたどりついていたと話しました。

 

泉の底に光るものを発見したゴローは、それを
取り出しに行こうとすると、娘は言いました。

「それは、私が捨てた冠です。どうぞ拾わないで」

「あなたに冠を称えた方の思いもあるでしょうから・・・」
と拾いに行こうとすると

 

「もし、それを拾うなら、私は泉に身を沈めます
お願いですから。 それに、あなたはどなたですか」

「わたしは、アルモンド国の王子ゴローというものです
あなたの名前を聞かせてもらえませんか?」

 

「私は、メリザンド」

王子ゴローはメリザンドの手を取り、いったん、
この森から出ようと決意しますが、メリザンドは
手を触れられることを嫌がり、夜通しこの森で
独りで過ごすと聞き入れようとはしませんでした。
それでもこんな所で、独りで過ごすのは危険すぎると
無理にでも連れ帰ることに決めました。

ところが、ゴロー自身も来た方向がわからなくなり、
道に迷ってしまったのでした。