隣国のウルスラ姫との結婚準備が始まったのも、
ゴローが先妻を亡くして、いつまでも独身でいるのも
良い事ではないと、祖父のアルケル国王が、その身を
案じて再婚話を進行させたものでした。

ところが祖父の気持ちを踏みにじり、ゴローは狩りに
出かけ、森で出逢った娘を勝手に別荘に連れ込んでしまい、
祖父の進める結婚式は破談となり、その後、盛大で
華やかな結婚の宴は執り行われることは
ありませんでした。

あの森で出逢った日以来、ゴローとメリザンドは
城には帰らず、別荘で二人で暮らしておりました。
誰からの祝福も受けることなく、ひっそりと結婚を
したのでした。
        
        3.城中の広間

それから半年ほどしたある日のことでした。
兄弟の母ジュヌヴィエーヴの住む城へ
兄ゴローから弟ペレアス宛の手紙が
届けられました。
母は、それを読み上げました。

 

-  ゴローからペレアスへの手紙  -
私は森に狩りへ出かけたとき、泉のほとりで

泣いている娘と出逢った。

どこの生まれか、身分も年齢も何もわからぬが、

金色の冠を泉に落としたところを見ると
身なりも良く、ドレスはいばらで破れてはいたものの、
まるで王女の気品を兼ね備えている美しい女性だ。

 

私が彼女と結婚したのは半年前の事だった。
ペレアスよ、おまえとは父親こそ違うが母は同じ。
私はおまえの事をいとおしく思っているよ。
そこで、何とかおまえに頼みたいのだが、
国王の怒りを沈め、なんとか城へ帰館できるように
取り計らってはもらえないだろうか。

 

もし国王がメリザンドを娘として了承してやろうと
おっしゃるなら、この手紙が届いてから3日目の夜、
海に面している塔の頂上に、ランプをともしてくれ。
私は船橋から、その明かりを見届けよう。駄目なら
二度とは城に戻らぬだろう

何とぞ、頼みたい。ご意見お聞かせくださいまし

 

祖父のアルケル国王は、母が読み上げるこの手紙を黙って、
傍らで聞いていた。