国王は言いました。
 

長い間生きてきて、この年齢になってわかることだが
目を開けたまま、一見すれば奥ゆかしく見える姿の
娘を追ったところで、相手の事をよくも見えずに
決めてしまえば、結局、いつかは、しくじるものだ。

ゴローはすでに分別盛りの年齢を超えておるのに
何を考えておるか!

ウルスラ姫との結婚は、長きに渡った隣国との
戦争に終止符を打つためのものでもあったというのに
わしは国のために、自分の運命に逆らったことなど
一度もなかったぞ。

あんな身勝手なやり方をしたということは、自分の
将来の運命も、よくわかってのことじゃろうな。

兄弟の母は、弟ペレアスならば、そのような生き方を
しても理解できるものだが、兄のゴローのような
くそ真面目な息子が、森で娘を拾ってくるというのは
どうにも理解できない。先立たれた妻との間にできた

一人息子のイニョルドのために生きていたようなものなのに

・・・・・何がどうなってしまったかわからないと
戸惑いながら、国王に弁明を繰り返しました。

そこへ、弟ペレアスはひどく哀しみに打ちひしがれ、
国王と母のもとにあらわれました。

兄からの手紙の他に、もう1通の手紙を受け取っておりました。

それは、親友マルセリュスからの手紙でした。
マルセリュスは死の床にあり、臨終前にどうしてもひと目
ペレアスと会っておきたいと書いて寄こしてきたのでした。
その行間がたいそう寂しそうで、とても会いたがっている
気持ちが伝わってくる。ためらっている時間がないので
兄の帰りを待てば、手遅れになってしまうかもしれない。

ペレアスが兄のことよりも友人の臨終に間に合うよう
出かけたいと申し出たところ、アルケル国王は
友人のことが心配なのはわかるが、兄ゴローの
行動は予想がつかないので、今、この事態で、
友を取るか兄弟を取るかといえば迷うことではない
とさとしました。

母ジュヌヴィエーヴも、ペレアスに兄の手紙にあった通り、
今夜、塔の頂上にランプを点すようにとさとしたのでした。