2.  城中の寝室
 

ゴローは、その頃、自分の寝室で横たわっておりました。
朝から、馬にまたがり森の中で狩りを楽しんでいたところ、
正午の鐘が鳴り始め、ちょうど12番目の音がしたとき、
馬が何かに驚いたようにいななき、気の狂ったように走り出して、
木にぶち当たったのでした。

落馬したところに馬がゴローの体の上に倒れかかってきて
まるで、森全体が自分の体の上にのしかかったように、
胸が押しつぶされて苦しくなったのでした。

幸い頭に軽い怪我をし打撲をした程度で一命は取りとめたものの、

出血がひどくベッドに横たわっているのでした。

メリザンドは森から戻り、寝室の夫の枕元までやってきて、
その痛々しい表情を見ると、血のついた枕を取り替えたりして
寄り添っていました。

メリザンドは一晩中、そばにいて看病したいと言いますが、
ゴローは妻に気遣わせるのも悪いような気がしてしまい、
それを遠慮しました。

しばらく、二人は同じ寝室で静かに過ごしていると
メリザンドのすすり泣く声がしてきます。

 

メリザンド、泣いているのか?

わたし・・・私、自分でもよくわからないのですが、
心が病んでいるのかもしれません。
この城へ来てからというもの、何もかも幸せと
感じたことがなくて、とても苦しいのです。

誰かが、おまえを苛めたとでもいうのか?
屈辱を受けたりでもしたのか?

いいえ、そんなことではないのです。
どこかへ行ってしまいたいほど、

ここでの生活が辛いのでございます

ふぅ~む、、、、

何かを隠していることでもあるまいか?
何もかも、ありのままを言ってくれないか?
心配のたねは、王か?母上か?

それともペレアスか?

いいえ、誰がどうというではないのです

では、わたしと別れたいと申しているのか?

いいえ、そうではありません。

あなた様とは、一緒にどこかへ行きとうございますが、
もう、ここでは暮らしたくはないのでございます

さては、 ペレアスだな。  

でも、あれが、おまえに頻繁に話しかけるようには思えぬが・・・
あれは、今、親友のマルセリュスが死にかけているのに、
見舞いにも行けんと気に病んでいるから、ふさぎ込んで
いるだけだよ。  そのうち、変わるだろうよ

メリザンドは内心、指輪を失くした後ろめたさで、
ゴローに気づかれる前に逃げ出したい一心でしたが、
ゴローはどうにかメリザンドの心の休まる道は
ないものかと、考えあぐねておりました。

ゴローは、さめざめと泣いているメリザンドの手を取り
慰めようとしたところ、気がつきました。

おや、おまえにあげた指輪はどうした?

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