おまえ、いったい、指輪をどこにやったんだ?
 

指輪・・・・

そうだよ、結婚の指輪だよ。どうした?

 

・・・まぁ、どうしましょう。  落としたんですわ。

きっと・・・

落とした?どこに落としたというんだ。
まさか、失くしたわけではないだろうな

 

た、たぶん、、、よくご存知の、、

ほら、イニョルドと貝殻を拾いに、

今朝、海辺の洞窟へ入ったのでございます。
そこで、指輪が抜け落ちてしまって、、、、

拾おうとしたのでございますが、、、

波が押し寄せてきたので、仕方なく、、、、

あそこに、間違いないと言うんだな
ならば、今すぐにでも探して来い!

こ、、、こんな夜にでございますか?

命ほども大切にしていた指輪を粗末に扱われ、
ゴローの怒りはおさまらず、メリザンドのおろおろと
困った表情を見るほどに腹立たしく思えてしまい、
その怒りも頂点に達すると、もう振り上げた拳を
下ろすことなどできず、ものすごい剣幕で怒鳴り散らし
愚かな行為だと責め立てるばかりで、とうてい妻を
許すことなどできなくなっておりました。

あたりまえだ。

あの指輪を失くしてしまうなら、

私の持ち物、全てを失った方がまだましだ。

おまえは、あの指輪の値打ちを知らん。

由緒も知らん。

海にさらわれてしまう前に、今すぐだ、 

今すぐ拾いに行け
ぐずぐずするなよ。   

独りでは行けぬというなら、
ペレアスを連れていけ!

あれは、私が頼めば何でも言うことを聞くはずだ。
あれのことなら、おまえよりも私の方がよく知っている。

急げ、早く急ぐんだ。 何している。もたもたするな
それを持って帰るまで、一睡もできそうにないわ

ああ、 どうしたら・・・・ こんなことになってしまって・・・

あのとき、泉に放り投げてしまったわけですから、

洞窟に指輪などないことはメリザンドが、

一番わかっていたことですが、いったんはずみで

口からついて出てしまった嘘を引っ込めることもできず、
仕方なく夜更けすぎに、ペレアスを伴い海辺の洞窟に
向かうことになったのでした。