ペレアス
城の門は、閉じられてしまったんだ。
君も僕も、もうあそこへは二度と戻れなくなったんだよ。
さあ、ここから、僕らの未来が始まるんだよ。 いいね。
メリザンド
ええ・・・
でも・・・・・・
ペレアスは、そう話すと再び、メリザンドを抱きしめて
キスをしようとしますが メリザンドは、さっきから落ち着きなく、
しきりに、あたりを見回して何かを恐れているようでした。
ペレアス
メリザンド、 さっきからどうかしたのかい?
メリザンド
私たちの後ろに誰かがいるわ
いったい、、誰なのかしら、、
さっきから、ずっと気配を感じるのよ,,,,怖いわ
ペレアス
君の気のせいだよ、誰もいないよ
だって、君も聞いただろう?あのかんぬきの音を・・・
城は閉まっていて、皆、もう寝静まっているんだよ。
メリザンド
でも、確かに音がしたのよ。 間違いないわ。
枯葉を踏む、カサカサという音がかすかに聞こえたもの。
二人は抱き合ったまま、念入りに暗闇の中で動く影を探すのでした。
メリザンドは声をひそめて言いました。
メリザンド
・・・・・・・彼だわ。 ゴローよ。 木陰から、こちらを見ているわ。
さっきは、寝たふりをしていただけだったのね。 起きていたなんて・・
ずっと、、、、私を、、、つけてきていたのよ。
ペレアス
僕には何も見えないよ。気のせいじゃないのかい?
メリザンド
いいえ そんなことない。
間違いないわ・・・
あれはあの人よ、
よく見て、ほら、あそこよ
ペレアス
どこ?
・・・・・・本当だ。 君、 あっちを、 見ないで。
気がつかない振りをするんだ。 いいね。
メリザンド
危険だわ・・・
彼は、剣を持っているわ、あなたを殺す気だわ。
ペレアス
僕は剣を持っていない・・・
何もできないよ・・・でも・・ 大丈夫だ・・・
メリザンド
私たちがキスしているのを見ていたんだわ
ずっと、あそこから・・・
ペレアス
メリザンド、あっちを見ては駄目だ
気がつかない振りをするんだ
いいかい?
僕は、しばらくじっとここに動かないでいる。
後で君を追うから、さあ、今すぐ、ここから逃げるんだ。
ほら、急ぐんだ。僕から、離れてできるだけ遠くへ逃げてくれ。
君まで殺されるわけにはいかないんだよ。さあ、早く、逃げて!
メリザンド
いやよ
あなたと一緒がいい
一緒に刺されても構わない。
離れない。
ずっと、 ずっと、 最期まで一緒よ。
ペレアス
ほら、ああ、、来たぞ、、、、来た、キスを、、、、
二人は夢中で、強く抱きしめ合いました。
ペレアス
あああ、、、、ああ、、、あ、
茂みに隠れていたゴローは、たまらず剣を抜き放ち、
ペレアスの背後から勢いよく突進して襲いかかり、
こん身の力を込めて、思いきり深く背中から剣を突き刺し、
ペレアスは泉の淵で力尽きて倒れ、そのまま身動きしなくなりました。
メリザンドの左胸は鮮血でにじみ、剣の先で突かれた傷口からは、
ぽたぽたと、血のしずくがしたたり落ちてきて地面を赤く染めていました。
メリザンド
ああ、なんということを・・
あああ・・・・・
メリザンドは その恐ろしい光景を見るなり後ずさりして
恐怖で震えは止まらず、その場から走り出していました。
逃げるなんて情けないと涙はあふれ、自分を責め立てながら、
わけもなく走りつづけました。
その後ろから、ゴローは必死の形相でメリザンドを追いかけました。