最終話
 

メリザンド 

今、誰が死ぬと、おっしゃいました?

ゴロー
おまえだ。おまえが死ぬに決まっている。そのあと、
私は死んでやる。どうせ、死んでいくんだから
今、本当の事を言っておけ。そうしたら、許してやる。

メリザンド
わたしが・・・・ 死ぬのですか・・・ なぜ・・・?

ゴロー
ああ、そうだ。  だから、今のうちだ。
本当の事を言えるのは、今しかないんだ。
さあ、早くしろ! 早く、言え! どうなんだ!

メリザンド
本当は・・・・・

ゴロー
本当は?どうなんだ?・・・おい。おい、メリザンド、
答えろ、答えるんだ。おい!おい、聞こえているのか!

メリザンド
・・・・・・・・・・・

 ゴロー
大丈夫か? 様子がおかしい。おい、しっかりしろ、しっかり
おい、死んでしまったのか? まだ、何も聞いてはおらんぞ

メリザンド
・・・・・・・・・

ゴロー
メリザンド、ほら、生き返るんだ、、メリザンド!


部屋の外で様子を見ていてアルケル国王は慌てて寝室にかけつけ

ゴローを引き離してやり、メリザンドに声をかけました。

アルケル国王
メリザンド、聞こえるかい、わしだよ
寒いじゃろう、窓を閉めてあげようか?

メリザンド
・・・・・いいえ、海に日が沈むまで見ていたいのです
そのままに、そのままに・・・・

アルケル国王
そなたは意識のない時に赤ちゃんを産んでなあ、
お母さんになったんだよ。 会いたいであろう?
今、会わせてやろうな

メリザンド
え?  赤ちゃんを・・・・・?

アルケル国王
ああ、そうだよ。そなたの子だ。可愛い女の子だよ。
かなり、早く生まれてな。少し弱っておる。
だから、わしが抱いていてあげるよ。ほら、見てごらん。

メリザンド
どこにおりますの? 会いたいですわ

アルケル国王
ほら、ここだよ・・・ わかるかい?

メリザンド
ああ・・・手を伸ばしているのにとどかない・・・抱かせて・・
まあ、小さな赤ん坊だこと、私の子、私の子、あなたは、
私の愛した、あの方の ・・・ 愛しい・・・  私の・・・・・・

アルケル国王
メリザンド、しっかりしなさい。
メリザンドが目を閉じたぞ

おい、しっかりするんだ

ああ、目が閉じかけている・・・涙が、溢れておるよ・・
メリザンドの魂が、子供を抱こうと必死に手を伸ばしておるよ
・・・戦っておるんだよ・・・生きたい・・生きたいとなあ・・・・
生まれた子のために生きたいと・・おまえの母さんはなあ・・

おまえのために、一生懸命、生きようとしているよ。わかるか?・・・・

メリザンド

・・・・・・・・・・

ゴロー
どうか、私をメリザンドと二人きりにしてもらえませんか。

アルケル国王

もう、駄目だ、そなたは人の心を持っておらん。
近づいてはならん。

ゴロー
でも、もう、目を開かない・・・   

メリザンド・・・

アルケル国王
目を閉じていても、最期まで耳が聞こえておるものだ。
そなたは、どこまで苦しめれば気がすむのだ!
これ以上、滅多な事を言うではないよ。
人の魂は、独りでそっと立ち去るものなのだよ。
魂が安らかに天に召されるようにしてあげなさい。

ゴロー
おお、おお・・・・  

メリザンド・・ 逝かないでくれ

アルケル国王
さあ、この部屋に独りにしてあげよう。
この赤ん坊も、生きていかねばならん。
この子を、母親のそばに居残してはならん。
立ち去るものを独り、ここに残してな。
今度は、この子が生きていく番なんだよさあ・・・・

安らかにメリザンドは天に召されていきました

          終わり