ネイチャーセンターベース復活 | SC南三陸のブログ

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ネイチャーセンターベース復活と地域資源

2020年2月1日自然環境活用センター(通称ネイチャーセンター以後ネイチャーセンター)が復旧記念シンポジウムを迎えました。

2011年東日本大震災で南三陸町戸倉波伝谷地区で被災したネイチャーセンターには、同年4月まで、エントランス屋根にトラックが乗っていました。

津波高23m。遡上高27mの津波の引き波で、高台から流されてきた青果トラックは、ここに引っ掛かり、乗っていた方は無事でした。

8割の住宅が流出した戸倉波伝谷地区では、皆が集まって話す場所や、道具を入れておく屋根がない為、同年4/24道路より海岸側のエリアでは初のボランティアによる瓦礫撤去が行われました。(通常は道路より山側のみボランティア活動エリア)

 

ネイチャーセンター内の瓦礫を片付けて、椅子を並べて、地域の会議室として、また戸倉地区6カ所の避難所をコーディネートする『戸倉ボランティアサテライトセンター』として、テントやスコップや漁具の仮置場として、壊れても尚活躍しました。

取り壊し後、その跡地は、環境省の学習施設『南三陸海のビジターセンター』が建設され稼働しています。 

志津川湾の生態を調査し青少年の環境教育プログラムも提供していたネイチャーセンターは、基地を失いましたが、有志の『ネイチャーセンター友の会』による環境教育活動が継続され、準備室による生体調査活動は止まる事なく継続し、ラムサール条約の取得等、施設を失いながらも大きな仕事を成し遂げ続けています。

閉校となった旧戸倉中学校の2Fオープンスペースは、ネイチャーセンター復旧記念シンポジウム会場となって、旧戸倉中学校2F西側一帯が、ネイチャーセンターとして改修工事を終えました。

戸倉中学校卒業式と閉校式会場がこうして地域の環境学習の場として戻って来ました。

多くの町民がその柿落としに駆けつけ、町長挨拶事の会場は満席となりました。

 

(右の空席は発表準備の生徒)

 

ネイチャーセンター準備室のプレハブには、全国各地の研究機関からのご協力と、日々の生態調査によるサンプル採集により、着々と再開に向けて、標本が集まっていました。海岸にうちあがったカマイルカの標本をつくるために、1年間に渡って臭いに耐えながら、腐臭準備室で肉を腐らせエアーレーションしながら骨格標本は作られ、9年目にしてようやく、南三陸海のいきもの常設展示として日の目を見る事が出来ました。平井さんぼんちゃん虹太郎さんの努力が、阿部拓三さんの熱意により結実した瞬間に立ち会えました。

ラムサール条約の湿地登録では、5つの基準をクリアして、日本三カ所しかない同率の最大基準取得地でもあります。

シンポでは、環境教育プログラムの実績発表が行われました。こどもラムサール条約の活動から生まれた『南三陸少年少女自然調査隊』の活動発表と、震災前から35年間継続する戸倉小学校の鮭の孵化放流等海体験学習発表と、震災後から始まった宮城県志津川高校自然科学部の防潮堤破壊に伴う松原干潟湿地調査活動の発表がなされました。地域資源に調査体験活動を通じて触れる機会を得て、子供達が原体験を通じて自然環境の保全と活用のバランスに意識的に行動できるようになれば幸いです。

所長の阿部拓三氏によると、志津川湾と三陸沖が豊かな海なのは、二つの暖流と一つの寒流が交わり、寒流のコンブから暖流のアラメまで寒暖両水域の種類の海藻が豊富であり、世界三大漁場を支える豊かな海底環境により、多様な魚種が存在する事が可能だからだそうです。豊かさとは生物多様性のことを言います。

この類稀な豊かさが当たり前だと思って生活していますが、ちゃんと生態を観察して、環境教育を行う事で、貴重で豊かな資源の保護と維持への関心を高め、何も無い町という勘違いから脱却して、目の前の豊富な資源をどう活かすのかについて関心を高めて、先進的な環境教育の場に出来るのでは無いか?そのベースとなる施設が、地域の思いの詰まった旧戸倉中学校という場所に復活しました。

1Fが浸水した高台の旧戸倉中学校は、1Fが戸倉公民館、2Fがネイチャーセンターと旧戸倉中学校震災資料館として復活しました。1Fにあった3月11日の黒板は2Fに移設されて当時のままの板書が残っています。震災の教訓と環境教育の両方が体験出来る施設です。南三陸町にお越しの際は、この戸倉地区のネイチャーセンターにもお立ち寄りください。 

追記:シンポジウム当日は、JFみやぎ志津川支所戸倉出張所から提供された戸倉っこかきが、戸倉婦人会によって牡蠣汁として振る舞われました

 

文責:・SC南三陸事務局 渡辺啓・波伝の森山学校(同)CEO・ネイチャーセンター友の会会員・戸倉地区ボランティアサテライトセンターリーダー・志津川自然の家避難所運営南三陸町委託職・旧戸倉中学校PTA(最後の卒業生保護者)・戸倉中学校閉校式保護者会