下りの電車に比べると
深夜の上り電車は乗客の姿がまばらだ。
夜風の吹き抜けるプラットフォームの対岸にベンチがある。
疲れた様子で腰掛け、うとうと居眠りをしている人
それから乱れた襟元を気にもせず酒に酔った赤い顔でケータイをいじる人
あとは
今日は暑かったからかな?ミニスカートの女子。
他にもちらほらと
来る列車を待つ時間。
白、ベージュ、白、とお行儀良く並んでいるベンチの真ん中あたりに
なんとなく異空間のような空気が漂っていて目を引いた。
私がとても好きだった頃のあの人にそっくりな人が片足を膝に預けて座っている。
よく見れば全く違う人
似ても似つかない人
真っ白なズボンが似ているだけなのに
懐かしい気持ちになった。
時間は戻らない
ただ進むだけ。
ホームに電車が勢い良く入ってきて、思考が遮断される。
夢から覚めたように
ただ人波と一緒に乗り込んで行くくたびれた私。