まん、が。 | 偏奇ぬりたて日記知床慕情

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目立たぬように はしゃがぬように








小学生の頃住んでいたN市の話。
近所に、歩いて一分ほどの所にS商店という雑貨屋があった。同じ通りの並びにはGスーパーという中規模のマーケットがあり、当然のことながら殆ど買い物客はGスーパーに入っていき、S商店は風前の灯のような寂れ具合だったのだが、私はこのS商店には冬の間限定でよく通った。何故にそんな潰れそうな店に通ったのかというと、そこには当時珍しかった肉まんあんまんが売られていたのである。今では肉まんあんまんなんぞは冷凍のやつを買ってきて電子レンジでチンすれば簡単に食べられるのであるが、当時は電子レンジを持っている家などごく僅かでありもちろん家にも無かったから、肉まんあんまん食べるにはこのS商店に買いに行くか、スケート場やスキー場に行かないと食べられなかったのだな、N市は田舎だったから。で、冬の間は週三回も通って肉まんを食べていた。勿論一個ずつしか食べられない。あんまんは食べた記憶はなく、ピザまんだのチョコまんだのコーまんだのはまだ発売されていなくて肉、あんの二種類しか無かったのだな。今でも覚えてるのは肉まんはまんじゅうのてっぺんに赤いポッチ(食紅?)が付いていて、あんまんは何も印がなかったということ。井村屋…だったかフタバ…だったかは覚えていない。S商店は閉店時間間際になると、アイスクリームの入っている冷凍ボックスにホカホカの肉まんあんまんを無造作に放り込み、ガチガチに凍らせてから次の日にはおもむろに蒸し器に放り込む、の繰り返しであり、これが続くとまんじゅうの生地がフワフワでなくベトベトに変化していくので不味いといえば不味いのであるが、それでも当時は有り難がって食っていたのであるな。「美味しい美味しい」言ってな。このS商店は、どういう訳だか知らんがカップ麺の最新作もバッチリ揃えていた。つまり、テレビCMで流れ始めた商品をちゃんと素早く売っていたのだ。普通、カップ麺などはテレビCM時とのタイムラグみたいなのが数日あり、食べたくてスーパーに走っても商品が無い場合がままあるのだが、S商店は必ずCM最新作カップ麺は揃えていたのだ。店主がカップ麺好きだったのかもしれないな。よくGスーパーに並ぶ前にS商店でカップ麺買ってきて、我慢すればGスーパーで買う方が安いのに、味を確かめたりしたもんだよ。断っておくがS商店はそのカップ麺以外はお菓子の袋が埃かぶっているような、賞味期限切れの商品がゴロゴロしているような店なのだよ。私が中学に上がる頃にはS商店は無くなっていた、と記憶する。あれだけ栄華を誇ったGスーパーも私が大学に上がる頃密かに店仕舞いした。我が家に電子レンジが入ってきたのはそのS商店が潰れた前後だったということは言うまでもない。