ミュージカル・ロマンス『フィレンツェに燃える』

作/柴田 侑宏  演出/大野 拓史
国家統一運動が起こり始めた1850年頃のイタリア、フィレンツェ。侯爵家の長男で、聡明で高潔な貴公子アントニオは、酒場の歌姫から貴族の未亡人となったパメラと出会い、その想いの深い瞳に魅入られ恋に落ちる。アントニオとは対照的に奔放な性格の侯爵家の次男レオナルドは、パメラが兄を破滅に導く悪女であると考え、二人を引き離す為に偽りの恋を仕掛けるのだが…。

 

アントニオの柚香光さんと、レオナルドの水美舞斗さん兄弟の熱演が伝わってきました。お二人にはぴったりの配役だったと思います。パネラの星風まどかさんは、裏に暗い影を隠していて、二人の愛を受け入れたいけれど受け入れられない苦しみをよく表現していたと思います。アントニオに恋するアンジェラの星空美咲さんは可愛らしく積極的で、この3人の間にしっかり入ってきていて、プロローグの場面を見ても、2番手としての位置をしっかり演じていました。

パメラの昔の恋人で、憲兵として、真相を知ろうと近づいてくるオテロの永久輝せあさんは登場場面は多くないのですが、存在感がありました。最期、レオナルドとの決闘の果て、殺され倒れた姿が、町のお祭りの騒ぎの端に残されたままだったので、ネットでは可哀そうと話題になっていました。死んだままの永久輝さんのお顔の美しさが印象的でしたが。

雪組では、何度か激しい決闘の場面を演じてきた彼女には、相応しい死にざまだったとも言えますね。

レオナルドとの決闘の流れで、殺されていくパメラは、誰とも愛をこの世では得ることができず死んでいきます。

最後にパメラを抱いて泣き崩れる水美さんが美しかったです。

この芝居の中で、バルタザール侯爵家の執事の航琉ひびきさんが、執事役には慣れていますが、今回は、本当に年を取った人の良いお爺さんになっていて可愛らしかったです。

アントニオとレオナルドの従弟のビットリオの愛乃一真さんは今回抜擢だったのではないかと思いました。お名前は知っていましたが、新発見の男役さんでした。

いろいろな場面に登場していた春矢祐璃さんが、生き生きと演じていて、前から、大人しい男役さんだと感じていたのですが、今回、この舞台が彼女を生き生きさせていたのだろうと感じました。

端から端までの生徒さんたちは、一人一人、大切に演じ、全国ツアーを楽しんでいるのだと思います。

 

ショーの方では、永久輝さんが豪華な女装をして登場する場面で、さすがに美しかったですが、トリオとして、航琉さんと、和海しょうさんが一緒に踊っていた姿は微笑ましかったです。

下級生たちの白い衣装のダンスの場面で、以前に見た時に印象に残っていて、しっかりソロで踊っていた娘役さんが、やっと三空凛花さんという方だと分かりました。これからダンサーとして活躍されるのではないでしょうか。

当日、劇場に行くことができなかったのですが、一人で、ゆっくり家で味わうことができ、一人一人の姿を確かめることができたのは、かえって良かった気がしました。