2月の読書記録の続きです。


矢作直樹著

「天皇」

kindle unlimitedのオススメに上がってきたこの本。著者は平成天皇が手術をお受けになられた時の主治医だったからでしょうか。天皇に対する尊敬と暖かな敬愛の念が伝わってきます。

表題は「天皇」のみですが、敗戦後の日本に対するGHQの施策についての疑問も丁寧に語られています。

戦勝国には日本人の精神性に対する恐怖心があり、徹底的に精神文化の土壌を破壊することで、日本人を2度と立ち上がらせないようにという意図があったといいます。

戦争の絶対悪。戦争の永久放棄。戦前教育の全否定。

戦後の民主主義教育の中で育った私は、軍国主義の誤り、A級戦犯は日本を破滅に追い込んだ悪い人、戦前の価値観は古臭いものと、刷り込まれた通りそう思い込んできました。

最近の日本人すご〜いとやたら日本人の凄さをアピールするTV番組には反発も感じますが、歴史上の人物に素晴らしい人達がたくさん存在したことを知るにつけ、同じ日本人として誇りに思うことも多くなりました。

著者は日本人の精神的支柱として、天皇の存在は有難きものと感謝を込めておられます。

古代から連綿と続いてきた天皇制です。

これからも未来永劫続いていくことを切に願います。



逢坂冬馬著

「同志少女よ、敵を撃て」

随分長く待ってようやく自分の順番が来た本。

アガサ・クリスティー賞を受賞し、2022年の本屋大賞受賞作品です。

そのニュースが流れた頃にロシアのウクライナ侵攻が始まり、二重に印象づけられていました。

てっきり、ウクライナの少女が関係しているのかと思ったら、この本はナチスの侵攻に抗うロシア赤軍側の物語でした。

物語の最初から、主人公セラフィマが暮らす村が虐殺の後焼き払われる描写があり、胸が抉られる、、、目の前で母が、隣人が、幼い子供が殺され遺体が蹂躙される、そんな場面を主人公の目を通して擬似体験させられる苦しさから始まりました。

TVニュースで見る映像が内側から当事者のように感じられる体験です。

読むのが辛いので、少しずつ読みました。

この物語はナチスに蹂躙されるロシア側の目線で書かれていますが、今は逆の展開になっているのが皮肉なものですね。世界は歴史から学ばないのでしょうか。愛する家族との平穏な日常が、どうして破壊され奪われなければならないのか。戦争の意義って何なんでしょう。

セラフィマは、成り行きで狙撃兵の訓練を受けることになりますが、その学びの奥深さには驚きました。瞬時に目視で的との距離を測ること、気象状況や距離を見て射程角度を求めること、ただ単に弾を打つのとは全く違いました。本当にこんな理数学的な知識を学び理解して実戦に臨んでいたのでしょうか。失敗は即ち死。息が詰まるような緊張感に包まれながら読みました。セラフィマ側の立場で読んでるので、相手は憎いだけの悪者=敵ですが、彼方の視点に立てばこちらは得体の知れない恐怖の憎き敵。倒さなければ倒される。どれだけ倒したか殺したかが価値になっていくのが狙撃兵=殺し屋です。

ラストは、戦後数十年が経って主人公が静かに暮らせていることがわかり、安堵を覚えました。



澤田瞳子

「月ぞ流るる」

平安朝の物語がこんなに面白いなんて‼️

「光る君へ」のおかげで垣根が低くなった平安時代です。古(いにしえ)の雅な世界、なよなよとした貴族のまったりした世界のイメージが、私たち現代人と同じ肌感覚の世界として読むことができます。

↑の「同志少女よ、敵を撃て」と並行して読んでいたのですが、↑を読むのに苦しくなるとコチラを読んで息を注ぎ、全く異なる世界観を切り替えながら読めることが読書の面白さとも感じました。

この物語の主人公朝児は、かつて赤染衛門とよばれ歌人であり源倫子の女房、学問の指南役でした。ドラマの中で凰稀かなめさんが演じています。

話は夫を亡くした晩年の頃で、藤原道長が権勢を誇っている時代です。道長と言えば三男坊のおっとりした柄本佑を思い浮かべるのですが、若き日とは想像もつかない野望のある権力者として描かれます。三条天皇との覇権争いはドラマの円融天皇と父道家を彷彿し、こんなふうに時の権力者の圧を受けながら天皇制は綿々と続いてきたのだと感慨も覚えます。と、大河ドラマを思い浮かべながら読むのは楽しい😅

十数年前に突然亡くなった女御原子の死の真相を求めるミステリー仕立てにもなっていますが、年老いつつも自立して生きることを模索し、使命を見つけることで生きがいを取り戻した朝児の人間物語でもあり読み応えがありました。



木村秋則著

「奇跡を起こす 

  見えないものを見る力」

奇跡のりんごの木村秋則さん。
随分前、NHKのプロフェッショナル「仕事の流儀」の番組で、苦労して無農薬無肥料の自然栽培のりんごを作られたことを知りました。「奇跡のりんご」の本や映画もありますが、そちらはまだ見ていません。
この本では幼い時からの不思議な体験が今にと導かれているような語り口で、興味深く読みました。
龍も宇宙人も、一般的に見たことがない者にとっては空虚な絵空事のように受け取られかねないでしょうに、「心」が目に見えなくても確かにあるのと同じく、龍や宇宙人も見える人にとっては真実そこにある間違いない体験だったのかなと思います。
そんなことより、「自然」に目を凝らし耳を傾けそこから本当のものを見つけようとひたすらに歩まれた木村さんの生き方が凄すぎて圧倒されました。
「努力」なんて言葉では収まらないです。
どうしたらそこまでになれるのかと、突き抜けた人間力を思いました。
うちにも小さな菜園がありますが、いつか自然栽培ができるかしらと思い巡らしています、、、🤔


寮美千子著

「あふれでたのはやさしさだった」 〜奈良少年刑務所 絵本と詩の教室〜 


こちらについては、先日の日記に書いたので、そちらをご覧ください❗️

心に沁みるルポルタージュです❤️



以上、2月は10冊を読了しました。

小説では、全く毛色の違う物語を並行して読むことになり、それぞれの物語性や世界観を行き来することが、かえって新鮮にそれぞれの物語に浸ることができ楽しめました。

どの作品を読んでも感じるのは作家さんの凄さです。深い知識に裏打ちされた見識での構成力や筆致力。外国では作家は深い尊敬を持たれるとのことですが、物語を生み出す創作の力に心から敬意を表します。


天候の悪い冬場ならではの冊数になりました。

これからは天候が良くなり庭仕事の時間が増えるので、本を読む時間は減るかもしれません。

陽の光を浴びると、夜は眠たくなるのよね。

それでも本と共にある生活を大切に、読書を楽しんでいきたいです。