第169回芥川賞受賞作でずっと読んでみたいと思っていた市川沙央さんの『ハンチバック』(文藝春秋)。


Kindle Unlimitedに入っていたので、すぐに読みました。




 

 


本作の主人公は井沢釈華(しゃか)。


彼女の背骨は右肺を押しつぶす形で極度に湾曲し、歩道に靴底を引きずって歩くことをしなくなって、もうすぐ30年。



両親が遺したグループホームの部屋で、ライターの仕事をして、そのお金を全額寄付したり、小説を書いたり、Twitterに毒を吐いたり、通信制大学の課題をこなしたりして暮らしていました。





彼女は本が大好きなのに、身体のせいで、厚みが3-4センチある本を両手で押さえて没頭する読書は、他のどんな行為よりも背骨に負荷をかけることでした。




目が見えて、本が読めて、ページがめくれて、読書姿勢がたもてて、書店へ自由に買いに行けるーー。




…その特権性に気づかない本好きたちが、紙の本の方が匂いが好きとか、感触が好きだとか言って、電子書籍を貶める行為に心底うんざりしていたのです。





そんなある日、グループホームのヘルパーで、入浴介助を担当してくれた男・田中が、釈華が「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」などと、中々過激なことを日々つぶやいてるTwitterアカウントを知っていることが判明し、物語は大きく動き出しますーー。



ハイビスカスひまわりチューリップガーベラ



寝たきり同然の重度障害者女性を主人公にした小説。


作者の市川さんは、主人公・釈華と同じ病気なのですね。そのため、小説の一言一句に非常に重みが感じられます。





衝撃的な内容で一気読みしました。



必要なサービスが迅速に困っている人の元へ届かない絶望…。


私も主人公にとっては読書強者でしかなくて、その事実に気づくことすらなくて生きてきて…。




誰かを傷つける正論ぶん回す前に、まずこの本を読んで魂の叫びを聞かなければならなかったんだと痛切に感じました。




また、個人的に紙の本は大好きなのですが(でも最近は電子書籍しか買ってない💦)、電子書籍の多大なる貢献というのも、ものすごくあるのだなと改めて思いました。


(そういえば、私が図書館司書になる勉強をしている時、韓国は、電子書籍がものすごく進んでいて、障害者支援が日本とは全然違うと習った気がします。)





さすが芥川賞と言いますか、重いだけのストーリーではなく、エンタメ感と重厚さが絶妙なバランスでミックスされており、所々ユーモアも挟まれていて読みやすいし、何より文章がとても美しいです。




釈華さんに「あんたのTwitter知ってるぜ!」と脅しをかけてきた田中は、いわゆる弱者男性と呼ばれてる人で、今の世の中をよく反映させた内容だなあとも思いました。



ラストも衝撃的。



読めてよかった。



これぞ最高の文章で小説だと心にガツンと刺さる物語でした。





我が家のあずちゃん。10歳超えです。


さゆ