新しい店が次々とオープン…
一流のホテルはスイートルームから埋まる…
企業訪問に行けば交通費が数万円もらえる…
これらはいわゆる「バブル」と言われる時代に実際にあったことらしいですが、生まれた時から不景気で、超就職氷河期世代に就活をした私。
(そして失敗してフルタイムパートをしておりました…。正社員になれたことは一度もない…)
今でも、自分が生まれる前に「バブル」という煌びやかな時代が日本にあったことを信じられません。
また、バブルにものすごい憧れもあるので、今回は、林真理子さんの恋愛長編・バブルの時代に美しさと若さでのしあがる女性が主人公の『アッコちゃんの時代』(新潮文庫)を読みました。
本作の主人公、男から絶え間ない賞賛を浴び続ける魔性の女「アッコちゃん」は、実際にモデルがいます。
私はテレビに登場した現在50代のアッコちゃんがあまりに美しかったので、バブルの時代とアッコちゃんが気になって本作を読みました。
物語は、アッコちゃんが20歳から40歳くらいまでの生き様が豪華絢爛でギラギラのバブルの時代と共に描かれているのですが、もう、こちらの「普通」と信じている感覚を捨てて読まないと、だんだん悲しくなってくるお話でした。
アッコちゃんはまず、女子大生の時に、バブルの地価狂乱に乗じて何百億という金を手にした「地上げの帝王」と呼ばれた不動産会社社長・50歳の早川の愛人となります。
白髪混じりのパンチパーマの早川は、金持ちで悪そうで、しかも、愛人がたくさんいる。おまけに銀座きっての凄腕ママと付き合っており、ママに多額のお金を貢いでいたのですが…。
アッコちゃんは、「この男と付き合ったらワクワクするようなことが始まるかも…!」と好奇心が抑えられず、早川の誘いにひょいと乗って銀座のママから早川を奪います。
そして、悪名高い地上げの帝王の愛人として、写真週刊誌に顔と本名を載せられてしまうのですーー。
しかし、アッコちゃんは強くてしたたか。
早川は大金持ちなのに、自分には高級腕時計しか貢いでくれないな…と少し不満を抱いていたところ、早川は国に目を付けられ、次々と災難が降りかかります。
それに便乗して早川と上手く別れたアッコちゃんは、次に、妻子ある有名レストランのオーナーで、最新の音楽を作るプロデューサーでもある五十嵐にしつこく求愛され、付き合うことになります。
いわゆる不倫ですが、アッコちゃんはすごかった…。
妻に責められても、
「男の方がしつこいんです。1年しか付き合わないから安心してくださいよ」
…と、火に油を注ぐ始末…!!!( ̄▽ ̄;)やべぇ…。
アッコちゃんを豪華なヨーロッパ旅行へと連れていき、たんまり金を貢ぎ、有名ホテルで同棲を始めた二人は、またもやメディアに追いかけられることとなるのですーー。
アッシー、メッシー、ミツグくん…。
ユーミンにワインやシャンパン、麻布十番の「マハラジャ」…。
日本中がハイテンションで浮き足だち、冷静に物事を見極めるのは困難なんじゃ? と思われるような時代に、若さと美しさを武器に、
「自分は選ばれた人間だ」
「これからもずっとこうなのだろう」
と思える華やかな女性・アッコちゃんの物語は、私の常識を派手に超えて来ました。
たぶんそこまでアッコちゃん的には悪いことをしてる感覚はなさそうで、「男は金ではない」と思っていることもある意味では本当で…。
「不倫は嫌だ」と拒否しようとしても、男もしつこくしつこくアッコちゃんに言い寄っていくので、アッコちゃんだけが悪いわけでもなさそう…だけど、アッコちゃんも読み進めると、中々のことをしているという(笑)。
「妻子がいる男を拒否することはいくらでも出来たろう」と怒られても、
「そういうのは、男から狂おしく愛されなかった女だ。一度自分のような目に遭ってみればいい。ほとほと疲れ、呆れ、しまいには笑ってしまう。するとその隙に、男たちは厚子を手中に収めるのだ」
ーーとあるから、同じ日本にいても、見えてる世界や経験することが、もう私なんかとはまるで違うんだろうなと思いました。
自分の感覚をこの物語に持ち込んではいけない。その落差を楽しむのがきっと正しい読書のやり方…なのでしょう(涙)。
アッコちゃんは、バブルの時代を大胆に渡り歩き、身体と心で楽しみ尽くし、今も尚、恋をして、美しく生きているのかなと思いました。
バブルに憧れていたけれど、もし私がバブル時代に生きていても、絶対こんなに男たちには誘われなかったと思うし、楽しむ度量もなかっただろうなあと思います( ̄▽ ̄;)
豪華絢爛で活気にあふれ、望めば富も手に入った時代。男たちの欲望を受け止め続けながら、自らも賢くバブルを享受したアッコちゃん。
私とは価値観は違うけど、どこかやっぱり憧れてしまいました。
本作は、『不機嫌な果実』、『ロストワールド』に続くバブル三部作とも言われているそうで、こちらもまた読んでみようと思います。