妊娠中、特に初めての出産ということも相まって、常に様々な恐怖に襲われていたので、ひたすら妊娠レポや妊娠エッセイを読んでいました。



(↑子がベビーベッド苦手で全く使わないので、もち様のものになりました…)



「なるほど〜」と思うものや、「ちょっとこの考え方は私には合わない…」と思うもの、色んな書籍と出会いましたが、特に印象深かったものを、ブログでちょこちょこ感想を書いてみたいと思いますニコニコ





まず1冊目は、さくらももこさんの『そういうふうにできている』(新潮文庫)。



 

 

そういえば妊娠中、私は、タイトル通り「そういうふうにできている」としか思えないことの連続でした。





私の意志など全く関係なく、どんどん大きくなるお腹、突然始まるつわり。


ホルモンバランスも狂いまくるので、少しでも感情を揺さぶるものがあれば、反射的に涙が出てくるのでホント困りました。



陣痛のタイミングも自分では決められないので、予定日が近くなると「一体いつお腹が痛くなるのだろう…地獄の苦しみが開始されるのだろう…」と恐怖に戦き、『鬼滅の刃』を読んで、柱たちが恐れることなく闘う様子に勇気をもらったりしていました。







本作は、漫画家のさくらももこさんが、妊娠発覚から出産までを綴ったエッセイです。



突然の妊娠発覚から、山口百恵さんに産院を紹介してもらったエピソード、つわりで眠気とだるさと嫌気が繰り返される中、漫画の〆切があるため、バカバカしいギャグを考えるのが辛かった話…。



便秘になり、悪魔の封印石のような便を出すため、トイレに1時間半籠城し、壮絶な戦いに挑んだエピソードなど、全てがリズミカルにユーモラスに綴られています。






このエッセイのすごいところは、面白いけれど、とても神秘的でもあるところです。




さくらももこさんは、帝王切開で出産されるのですが、麻酔がかかった状態の時に、不思議な感覚に陥ったそうです。


その際に、長年の懸案だった「魂と脳と心」の関係を自分なりに解き明かす体験が鮮烈でした…!




帝王切開は、お腹が割かれているわけですから、普段の状態に比べたら明らかに死に近づいている。(考えてみれば帝王切開ってものすごいことをしていますよね…)



その時に、意識が生々しくクリアになり、心の方は逆にどんどん静かになり、非常に密接に繋がっていてややこしい「魂と脳と心」の関係を、実体験からリアルに解き明かす様子は、スピリチュアルがかっているようにも思えますが、「ああきっとそうなんだろうな」と素直に思える説得力がありました。




私は帝王切開で産まなかったけれど、出産は、科学うんぬんでは説明出来ないような、何か大きな力が働いているのを、少しばかり感じたせいか、余計にそう思いました。



ハイビスカスひまわりチューリップガーベラ


また、さくらももこさんが、息子さんを心から可愛がりつつも「彼は私の分身ではない」と度々、一定の距離を持って見ているところも心に残りました。





「子供は子供で私ではなく、別の個性と個体を持ち、違う人生を歩んでゆくのだという距離は相変わらず気持ちの中にあるし、この気持ちは大切にしたいと思っている」 (187P)




ーーと考え、親だからと言って小さな生命に対して特権的な圧力をかけたり不用意な言葉で傷つけたくないと綴られています。





…この考え方は私も、絶対に忘れないでおこうと誓いました。


産まれてきて2ヶ月の我が子はそれはもう、死ぬほど可愛いし、何かあれば自分の身が削られるように私も辛いと思うけれど、息子は私ではない。



彼も、自分の人生を自分で考えて、一人で歩き出す日がきっと来る。


私の意見や人生のスタンスは絶対ではないし、息子が色々な価値観や考え方に出会えるよう、導いて育てなければならないな…と感じたのです。




ハイビスカスひまわりチューリップ猫


共感や爆笑するところも多かったけど、深く考えさせられるところもあって、面白いエッセイでした。


さくらももこさんがもうこの世にはおられないことが信じられないです。



きっとこれからも著者のエッセイは何度も読み返すと思います。


素敵な作品をありがとうございました。





さゆ