こんばんは。さゆです。
いつの間にやら12月。
いや本当に年々、時の流れが早すぎて泣きたくなりますね。
何も変わらないようでいて、少しずつ確実に変化が起きているから、気が抜けないです。
いや、生粋の怠け者の私、気は抜いてますね...( ̄▽ ̄;)
さて、今日は前々回から予告していた岡本かの子さんの小説『越年』(角川文庫)の感想を書きたいと思います。
岡本かの子さんを知ったのは、確か島本理生さんの昔のエッセイ。
かの有名な岡本太郎のお母様で、夫・一平の放蕩に苦しみ、夫に愛情が持てなくなったあと、夫公認のもと、愛人と夫と同居していた...と記してあったので、驚きました。
そのあと、仏教に救いをもとめ、仏教研究家としても活躍なさったとか。
私は下世話な人間なので、そんな激動の人生を送った方がどんな文章を書くのか気になって、来春『越年』が映画化されるとのことで、本書を手にしたわけですが...。
いやあもう......。
圧倒的に美しい日本語と、深みのある描写と、とんでもない色気に終始圧倒されました。
こんなの読ませられたら、私の日本語は本当に鼻くそ以下だわと恥ずかしくなるばかりです...。
さゆ@読書@sayulog『越年』(岡本かの子)読了。突然平手打ちをされ、行方をくらました男を追う女を描いた「越年」や、想い人を失った男が代償として美麗な新種の金魚を創り出す「金魚撩乱」。岡本かの子氏の小説を初めて読んだが、一文一文がとても美しい日本語で圧倒された。色気と深みと人生経験がものすごい...。 https://t.co/GDXyWbIVAO
2019年12月01日 17:33
本書は、表題作の『越年』を含む、8つの恋愛小説が収録されています。
「越年」は、年末のボーナスが出てウキウキしていた加奈江が、突然同僚の男性・堂島から平手打ちを食わされ、呆然とするシーンから始まります。
堂島とはほとんど絡んだことのない加奈江。
驚きと怒りでいっぱいになり、上司へ報告しますが、堂島はそのまま行方知れずになってしまいます。
加奈江は悔しさのあまり、同僚とともに、連日、彼がいるらしい銀座を歩き回ることになるのですーー。
ビンタされて行方不明!ひどい!!
私が加奈江だったら100倍返しをするために、何としてでも見つけ出すと思います( ̄▽ ̄;)
しかし、男が心に抱いていた意外な本音や、何とも焦燥感の募る哀しくてエゴイスティックな展開に、呆然としてしまいました。
人って時々、本当に訳わかんないことしますよね...。
他に印象的だったのは「金魚撩乱」。
金魚屋の復一が、お嬢様の真佐子に恋をするのですが、彼女は復一に何も告げず、さっさと結婚してしまいます...。
彼は真佐子恋しさにだんだん精神がおかしくなり、真佐子を得られなかった代償として、彼女を彷彿とさせる美麗な新種の金魚を作り出すことに生命を懸けるのですーー。
「金魚のために人間が生き死にした例がいくつもあるのよ」
これは真佐子の言葉ですが、マジで復一死ぬんじゃない!? というくらい、我を忘れて金魚に没頭し、狂っていく様子が恐ろしかったです。
男の焦燥感と半狂乱。
それに反して、とても美麗な金魚の描写。
「小説に酔う」とはこのことか...というくらい、頭がクラクラしてしまうお話でした。
他にも、子供が急病で、映画館に恋人をつれてデートしてる夫を連れ戻しにした奥様の話「気の毒な奥様」は、たった2ページのお話なのに、夫がどうしようもなさすぎて、とても心に残りました。
あ、思い返すと、財も芸もある老いた芸者が、金儲けをしたい若い男をある目的のために養っていく「老妓抄」もそうですが、とんでもない男はたくさん登場したような気がします。
そんな男たちを責めるでもなく、自らの人生を悲観するでもない女性たちの美しさや強さも、本書はとても光っていました。
私の語彙力では、本書の魅力を伝えるのは不足が多いのが本当に残念です...。
一文一文に魂が込められていて、甘美で幻想的で、日本語はこれほどまでに美しいものであったか、これほど深く人の心に染み入るお話が書ける女性がいるのか...と、終始圧倒され、引きずりこまれた小説でした。
では本日はこのへんで...
ブログ、間が空いてしまいましたが、12月はたくさん更新できるよう、今年ラストですし、頑張ります...!
皆様今日も一日お疲れ様でした。
さゆ