おはようございます。さゆです。

 

 

「宝物はナナ(柴犬)との写真の2ショットラブラブ

 

(↑抱っこされてしまったわ……。まあ私が歩かなかったからなんだけど。byナナ)

 

……などと抜かし、自撮り写真を色んな人に送りつけ、日々ドン引きさせている私です。

 

一瞬、私の顔「バーン」って出したのを載せようかと思ったのですが、三十路のすっぴん自撮り写真など誰が見たいのかと我に返り自重致しました……。

 

 

それはともかく、更新、また久しぶりになってしまいました。

 

本は……。本は読んでいたのです……。

 

しかし。あまりにも衝撃的な内容で、感想を書くのにものすごく時間がかかってしまいました。

 

はい。いつものごとく書評サイト・シミルボンでコラムを書いて参りました。

 

 

今回原稿用紙10枚・4000字も書いてしまい、正直誰が読むのよそんなに長いの! 感が否めませんが、良かったら読んで頂けると嬉しいです。

 

今回は柚木麻子さんの『ナイルパーチの女子会』(文藝春秋)を読んで参りました。

 

2015年の直木賞候補にもなっていましたねニコニコドキドキ

 

 

注意:以下、少々ネタバレあります。

 

 

 

(Twitterのリンククリックでシミルボンでのコラムが読めます。よろしければシミルボンにも遊びに来て下さいませ照れ

 

 

 

 

 

この狂った女は私自身でもある。

 

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幼い頃「大人になったらできる」と信じていたことの多くが、残念ながら、30歳を迎えた今もできていません。
 

大人になっても、人とのちょうど良い距離感はつかめぬままだし、落ち着いた大人の女にも、一生かかってもなれそうにない。
 

いまだに他人のブログに嫉妬することがあるし、一円にもならないのに「インスタ映え」する写真を撮ろうと躍起になっている自分にハッとしては、言葉を失う毎日を繰り返しています。

 

価値基準を他者に置いた、あふれ出す承認欲求も、まだまだ消せそうにありません。

 

 

柚木麻子作の『ナイルパーチの女子会』(文藝春秋)は、ブログがきっかけで偶然出会うことになる30歳女性二人の"狂気"とも言える関係性の物語です。

 

自分と同い年の女性たちが繰り広げる、深い闇やコンプレックスに満ちた日々の営みに、言葉を失うと同時に、全身に鳥肌が立ちました。
 

なぜなら、この狂った女性たちの一部分は、確実に私自身にも身に覚えがある感情や行動だったからです――。

 

 

 

 

 

■女友達がいないという事実

 

本書は、丸の内の大手商社に勤める美人のキャリアウーマン・志村栄利子の語りから始まります。
 

彼女は30歳になった今も母親のサポートを受けながら、実家から会社に通っています。残業が禁止されているため、早朝出勤をして、日々の膨大な業務をこなす働きウーマンです。
 

そんな彼女の楽しみは、同い年の人気主婦ブログ『おひょうのダメ奥さん日記』をチェックすること。
 

「おひょう」のブログは、食生活も家事もいい加減なのに、不思議と清潔感や節度が感じられ、肩の力が抜けたマイペースな文章に癒される読者は多く、アンチもおらず、人気主婦ブログランキングでも毎回上位にランクインしていました。

 

 

一方、そんな「おひょう」こと丸尾翔子は、実は栄利子の家の近所に、スーパーの店長の夫と二人で暮らしていました。

 

専業主婦をしているものの、食実は作ったり作らなかったりで、ファミレスや回転寿司で夫と待ち合わせすることも多い生活ですが、夫婦仲は良好です。
 

 

栄利子は、翔子が猫のように気ままに過ごしている様に惹きつけられていたのですが、実は翔子は、幼い頃家族を捨て出て行った母親と、再婚しても傲慢なほど自分からは何もせず、無言の威圧感を放つ父親の存在に、ほとほと困り果てていました。

 

 

そんなある日、翔子のブログに書籍化の依頼が舞い込み、彼女は編集者と近所のカフェで待ち合わせをします。

 

そこには偶然にも栄利子が客として居合わせ、二人は出会いを果たします。
 

生きる環境があまりにも異なる彼女たちですが「30歳にして女友達がいない」という共通の悩みを抱えているため、仲良くなるのに時間はかかりませんでした。

 

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■ナイルパーチのごとく人を破滅に追い込む女

 

ところで皆さんは「ナイルパーチ」という淡水魚をご存知でしょうか? 

 

私は知らなかったのですが(汗)。
 

ナイルパーチは、スズキ目アカメ属の淡水魚。原産はアフリカ大陸で、最大2メートルで200キロの、湖や河川に生息している、癖のない淡白な味わいからは想像もつかないほどの凶暴性を持つ肉食魚です。
 

なにしろ、アフリカのビクトリア湖に放流されたナイルパーチは、短期間で在来種200種類を食い荒らし、絶滅させてしまったそう。湖の生態系が壊れたせいで、水は汚染され、普段食べられるような魚は獲れなくなった。
 

淡白でくせのない味わいは日本でも受け入れられやすく、九十年代は「スズキ」や「白スズキ」として流通したこともあるものの、最近ではその九割が欧米に輸出されていて、滅多に見ることがないのだと言います。
 

 

栄利子は現在、このナイルパーチの販路を再び開拓するプロジェクトを担当しており、現地のタンザニアの設備を整えるために、この数カ月を費していました。

 

 

 

読み進めると、栄利子はまさにこの「ナイルパーチ」のように、周囲を雪崩のように破滅させていく女だということが感じられます。

 

ある日翔子は、父親の具合が悪くなり、携帯を置いて田舎の実家に帰っていたため、3日間、ブログの更新ができませんでした。
 

すると、その間に栄利子は彼女に大量の「心配している」メールを次々に送りつけます。
 

そして3日後、まだ3回あっただけなのに、ブログに写っている景色を頼りに、家を探し、会いに来るのです(!)
 

 

他にも栄利子は「友達だからよ」という言葉を盾に、次々とおかしな行動をとり始めます。
 

例えば、翔子にストーカーだと思われたかもと心配した栄利子。
 

彼女は、「そうだ、自分と言う人間を知ってもらうために、もっとたくさん翔子にメールを送ろう!」という思考に陥り、ストーカーじみた行動は勢いを増します。
 

また、翔子にありったけの思いやりと友情を込めて、

 

 

「翔子さん、本当はすごい人なのよ。

もっともっと上に行ける人。家でだらだらしているような人じゃないの。

あんな普通の旦那さんで満足していいレベルの人じゃないの。

でも、ネットでちょっとちやほやされることに満足してる。本当はちゃんと仕事で評価されて、リアルの世界で成功する人なのに、見ててもったいないな、って思っちゃう。マイペースを装った臆病者っていう風に見える」(p93)

 

 

なんてことを言ってしまうのです……。本気な分、絶句してしまいますよね。

 

 

 

しかし、翔子もまた心の闇を抱えていました。
 

彼女は、アンチという存在がいないのは自分のブログの長所でもあるけれど、同時にそれは誰からも羨ましがられていないことの表れでもあるということを認識していました。
 

彼女は「98円均一の寿司屋など初めて行く」という栄利子に対し、少しだけ胸がざらつき、「ブログに嫌がらせのメールが届いた」と話します。

 

そんなメール、一度も届いたことがないのに。
 

翔子は昔から「誰かに尾行されている気がする」とウソを言って、男性を自分のアパートに引き入れたり、小さなウソをきっかけにして、何かをつかんで来たことがあったのです。
 

翔子は正直なところ、栄利子の上辺やステイタスだけに惹かれていた。

 

東京に生まれ育ったお嬢様・栄利子に平凡な自分を引き上げてほしかっただけで、心底仲良くなるつもりはなかった。
 

ですが、他者を求めずにはいられない、底知れない孤独や鬱屈を抱えた栄利子は、意図せぬうちに翔子の自尊心やプライドをズタズタにし、ますますおかしな行動へと走らせるのです……!

 

栄利子が狂わせたのは、翔子だけではありません。
 

彼女は学生の時、自分から距離を置きたいがために、幼馴染の同級生がついた嘘を、学校中に吹聴して回ったし、正社員である同僚が婚約した派遣社員の女性にも、ひどい行動を取ります。
 

相手がどう思うかなんて考えもしないし、博識でステイタスもある自分の考えることが「絶対の正義」です。
 

そんな栄利子と関わる人たちは皆、彼女に自分自身のコンプレックスを見出し辛くなり、静かに距離を置いていくのでした……。

 

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■女友達、必要?

 

栄利子は、友達がいないことを、かなりのコンプレックスに思っていました。

 

だから友達の登場しない翔子のブログに執着したのだし、この屈託を上手く飼い慣らす術を知っているのではないかと期待もした。

 

 

「ああ、もう三十歳なのに、友達ひとり上手くつくれないなんて。」(P72)

 

「日本人が女性に要求するクオリティの高さは、世界規模で見れば常軌を逸していると思う。まったくなんと多くのことが女性に求められるのだろう。

異性の評価、貞淑、若さ、落ち着き、仕事、趣味、笑顔、スタイル、雰囲気、心配り……。そして同性の評価。同性に好かれない女には価値はない、という風潮は年々高まっている気がする。」(P114)

 

 

そんなつぶやきが、至る所に登場します。

 

しかし、よくよく考えてみると、女友達って絶対に必要なのでしょうか。
 

確かに、友達がいれば楽しい。会話することや、悪口を言うことで発散できるのは事実。
 

SNSでは「親友」や「女子会」というワードはよく見かける。そんな時、友達がいないことがコンプレックスに思えてくることもある。
 

でもそれが「欠陥」かと言われると、違うかもしれません。
 

なぜなら、皆が友達を上手く作れる環境にいるかと問われれば、決してそんなことはない。

 

30歳の女性なんて、共通するのは年齢くらいで、驚くほど多様な環境に置かれている。嫉妬するなと言う方が無理だったりします(笑)。

 

女同士の建前やルールに馴染めず、しんどいな~、もう信頼する人が一人いれば十分かな~なんて感じるのは、恐らく私だけではないはずです。
 

きっと、70歳くらいになれば、またわかりあえる日がくるのではないかな、なんて妄想したりもします。

 

 

翔子は皮肉にも、栄利子と出会うことで、面倒くさがりな自分のことを省みて、避けてきた父親と真正面から向き合うことになります。

 

また、面倒を避けずに仕事や勉強をしなければならない理由や、他者の事情を慮ることがいかに大切かを考えさせられるのです。
 

私も、栄利子の正論と狂気じみた部分、両方を通して、自分の嫌な部分をた~っぷり考えさせられました。
 

特に「自分を取り巻くすべてを変えないで、自分だけが上手く変わりたい」なんて発言には、青くなってしまいました。確かにこんな矛盾した願望は、恐ろしい事に幾度となく心に浮かぶのです……。
 

もう30歳なのだから、自分の許容範囲を明確に意識しつつも、面倒なことから逃げずに、向き合わねばならない問題はたくさんある……。あるのです……。
 

栄利子……!とても恐ろしい子です。
 

352ページにも及ぶ長編、一気に読み終えてしまいました。

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 

 

ふ~~~。長かったですね。いかがでしたか? それにしても、長かったですね。(汗)もうPCをタイピングする手がとまらなくてですね。これでも1,000字くらい削ったのです。誰が読むかと我に返ってですね……。

 

私がこの物語で感じたことは、30歳女性の友人関係の難しさだとか、妬みや嫉妬とか三十路になってもめっちゃあるある困ったとか、女子会とか親友とか誰でもできると思うなよこのやろー!!!とか(友達がいない私……)色々あるのですが、

 

まあ別に「親友欲しい友達欲しい」願望は年を重ねるたびに消えていったので、

 

それよりも

 

面倒なことは避けてはいけない。避けたところで必ず追いかけてくる

 

ってことかもしれません。

 

別に身体や心身を壊すほど嫌なことをせねばならぬ、とか、合わない仕事をすべし、とかそういうことではなく、

 

人と人との関係性だったり、他者の気持ちを配慮する余裕だったり、いくつになっても学び続ける姿勢であったり、そういうことです。

 

自分の限界を認識しつつも、たぶん年齢ごとに超えていかなきゃいけないステージみたいなのはちゃんとあって、やるべきことはきっちりやっていかなくては、痛い目見るかもしれない……。

 

なんてそんなことを思いました。

 

……というわけで、今日も家事と原稿を頑張ります。

 

できること、少しずつ増やして、思慮深い優しい大人を目指して(もう大人だけど……)頑張るのです。

 

アラサーが多く登場する柚木さんの作品、同世代感がとてもあって大好きなので、また近々登場するかと思います。

 

 

よかったら、見に来てやって下さいね。

 

まだまだ暑いですがガーン皆様身体にお気をつけて。

 

今週も一週間、お疲れ様でした。土日もお仕事の方、お疲れ様です。

 

 

また更新しますねー!

 

 

さゆ