こんな歯医者さんだったら行ってみたい。
 
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「さゆちゃんは中々死なないだろうね……」と、周りからあきれられるくらい、身体に少しでも異変を感じたら、さっさとお医者さんに行く私ですが、ど~~しても苦手な病院もあります。
 
それは歯医者。
 
 
 
 
あの、病院の戸を開けた瞬間の「キーン」と響くドリルの音。あれ、何とかなりませんかね?(涙)
 
薬品の匂いに満ちた、張り詰めた空気の待合室。泣き叫ぶ子供の声。
 
マスクで顔の大半が覆われた歯科医師。手には銀色に光る怪しい器具。
 
 
 
……治療中も、どう考えても動けないし逃げられないしで、恐怖でしかありません。
 
 
 
だから私は「歯が痛いような気がする……」と思っても「気のせい気のせい」と痛み止めを飲んで耐えるのが常になっていました。
 
 
結局、痛みの限界を超えてから歯医者へ行き、長く通うハメになっているのですから、ほんとアホなんですけどねえ。昨年は、親知らずを3本も抜いて、散々でした……。
 
 
 
 
 
さて。「人が死なない日常ミステリー」をたくさん出版されている坂木司さん。
 
今回読んだ『シンデレラ・ティース』(光文社文庫)は、歯医者さんを舞台にしたお仕事ミステリーです。
 
 
 
本書はですね、もう「歯医者なんか嫌いやし~!」と思っている人にこそ、おススメです。
 
 
 
主人公は、幼い頃、怖い体験をしたことが原因で、歯医者が大の苦手な女子大生のサキ。
 
のほほんとした穏やかな性格の、可愛い女の子です。
 
 
そんな彼女が、母親の策略に引っかかり、夏休みに、親戚のおじさんの働く歯医者で、受付のアルバイトをすることが決定した所から、物語は始まります。
 
 
 
 
本書は、5つの短編が収録されているのですが、サキが、個性豊かで優しいスタッフと、様々な悩みを抱えて通院する患者さんを通して、大きく成長する所に、胸を打たれました。
 
 
 
クリニックに持ち込まれるのは、虫歯だけではないのですね。患者さんが、心に隠し持っている悩みも一緒に解決していかなければならないのです。
 
 
 
例えば。
 
 
・彼氏のことは大好きなのに、どうしても一緒に旅行に行けない女性
 
 
・どんなに丁寧に対応しても、怒る男性患者
 
 
・毎回予約時間に遅刻してクリニックに現れるサラリーマン
 
 
などが登場します。
 
 
 
これらの謎を、歯医者さんならではの知識で、細やかに解決して行く様子が素晴らしかったで
す。
 
 
 
また、サキがアルバイトをする「品川デンタルクリニック」は、患者さんを「お客様」と呼び、診察券を「メンバーズカード」と呼んでいました。
 
内装もオシャレなインテリアにこだわり、トイレとは別にパウダールームも設置! 荷物やコートを預かる「クロークシステム」もあり、歯医者に来ると言うよりも、スポーツクラブやエステに来る感覚で利用してもらいたい……という方針のクリニックでした。
 
 
 
「医師と患者は対等で、医者なんてサービス業だ」という考えの院長は、清清しくて魅力的でした。
 
お医者さんも、患者さんも、お互いにペコペコ頭を下げる必要が、ないですからね。
 
 
 
 
また、サキのおじさんもすごく丁寧な歯科医で。

「僕は『良薬は口に苦し』なんてことわざ、大っ嫌いだからね」

 
 
と言い切り、「いつか」良くなる……なんて言葉は使わないで『今』、痛くないか。今夜眠れるのか。
 
そこをきちんと汲んで、患者と対話して、信頼を得て、痛みや不快感を減らすことに全力を傾けていて……。
 
 
その仕事に向かう姿勢がすごく尊敬できました。
 
 
 
加えて、歯医者さんが怖いのは「歯科治療恐怖症」という、医学書にも載っているれっきとした病気がある……という事実にも驚きました。
 
 
 
 
 
さあさあ、サキはこの歯医者さん嫌いを治すことができるのでしょうか?
 
どちらかといえば、受け身で人に合わせるタイプだったサキが、困ったときいつも謎を解く手助けをしてくれる、歯科技工士の四谷くんの力を借りて、積極的に前へ進み出す様子がまぶしくて、元気をくれるミステリーでした。
 
今度から、歯医者さんに行く時、ちょっとだけビビらずにすみそうです(笑)。
 
 
 
★余談★
 
この週末は色々ありました。
 
スマホが壊れ、東京駅に行き(両親たちにお土産を買いに)、ロフトへ行き、ボーリングへ行き、ゲームセンターへ行き、月曜日が嫌すぎて、日曜日の深夜にお好み焼きを食べに行く夫婦でした……。
 
月曜日。雨のスタートですが、とても寒いですが、今週も頑張りましょう。
 
色々あるけれど、もうすぐ桜が咲くからきっと良いこともあると信じて。
 
 

 
さゆ