こんにちは。
福祉に詳しい鹿野です。
前回に続き、もう一発 障がい者の福祉制度に物申します。
昨日、障がい者雇用27省庁水増しについて思うことを述べましたが、実は、ブログにアップしようと思ったのは成年後見制度の欠格条項について書かれた記事がきっかになったのです。
私のもとには、さまざまな団体さんが発行される通信や機関誌が送られてきます。
その中でも、毎月楽しみにしているのが、ぷくぷくの会が発行される《まねき猫通信》です。
退職した今でも個人会員になって購読しています。
こちらの通信は、毎回、福祉制度の問題点や、それに対する当事者の本音を包み隠さず、そのまま声として記事にアップされています。表紙のトリの眼・ムシの目・ニャンコの目は社会問題に対する皮肉から始まり、当事者リレーエッセイなんかは、当事者目線で社会や教育についてもズバズバと踏み込まれています。毎回内容に唸らされます。
まねき猫通信を購読してみたい方はこちらへ
http://www.puku-2.com/manekineko/index.html
その、まねき猫通信の中でも特に気になっているのが、大阪地裁で争われている「欠格条項」裁判の行方です。
グループホームを利用されている知的障がいと自閉症のある男性は、地方公務員として6年間働いてこられました。父が重病を患ったことで、市役所から親なきあとの財産管理のアドバイスを受け、成年後見制度の利用を大阪家庭裁判所に申し立てされました。結果、保佐の審判がされたことで、「地方公務員法の欠格条項に抵触するので次の更新はしない」と通達され、この男性は公務員の職を失ったのです。現在復職を目指して、市役所を被告として裁判を起こし、第6、7回口頭弁論の様子がまねき猫通信にアップされています。* 実名、市役所など公表されていますがここでは匿名としておきます。
なんじゃこれは
毎回読んでいますが、市役所はクビにしたのは「欠格条項」ではなく、ご本人に「問題行動」があったからと主張しています。
その問題行動とは・・・
"他部署の若い女性職員の近くに行って話しかけたことが数度あり、その女性の名前を言って挨拶したこと" だそうです。
これが、問題行動???
若い女性職員ではなく、私のようなおばはんの職員だったらよかったのでしょうか?
第7回口頭弁論では、障がい者就労支援の専門家とケースワーカーによる証人尋問とご本人の証言の様子は、まねき猫通信に書かれています。
今回の裁判で注目したいのは、「欠格条項」が理由なのか、「問題行動」が理由なのかです。若い女性職員の名前を呼んで挨拶したことなどが問題行動と判断され、市役所の主張が通り雇い止めが成立するなら、それは、それで、就労支援のあり方そのものに多大なる影響を及ぼす可能性があります。
障がい者の就労と成年後見制度の欠格条項の問題は、成年後見制度をよく知る人か、懐疑的な立場の人か、裁判に関心を持っている人しか知らないような気がします。
専門職や、福祉に携わる支援者の中には、成年後見制度の利用を気軽に促す方がいますが、成年後見制度が万全ではないと言うことをしっかり伝えたうえで、ご家族やご本人さんに促してほしいと思っています。
この方も、「成年後見を利用したら市役所では働けなくなる」と事前に知っていたら、この制度は利用しなかったかもしれません。
成年後見制度はまだまだ万全な制度ではなく、制度を利用したことにより、ご本人に関するさまざまな権利が奪われてしまう側面があります。
ただ、本人や周囲が起こす裁判により、2013年7月1日に成年被後見人の選挙権の回復についての法律が改正され、政府はこの欠格条項についても2019年5月までに全廃する方針を固めています。現場から上がってくる声により見直しはされますが、それでも一度利用したら、簡単にやめられない制度には違いありません。
ということなんですが・・・・
公務員の欠格条項が現在有効である以上、27省庁が起こした障がい者雇用の水増し問題に大きく関わってきます。
欠格条項の全廃に向けて法案が通る前のタイミングで、このような水増し問題が発覚したこと自体が、政治的なうさん臭さを感じてしまうのです。
成年後見制度の話については、定期セミナーでもお話いたします。
いつ必要なのか?本当に必要なのか?誰に必要なのか?ほかに方法はあるのか?などなどお話いたします。