小島聖ってこんなに可愛かったのかい!映画『完全なる飼育』(1999)レビュー | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

来月7月3日からNetflixで配信が開始する

Netflixオリジナルシリーズ「呪怨:呪いの家」

昨日発売された雑誌「映画秘宝」8月号内で特集が組まれており、

「呪い」という概念を再定義しそうなこのドラマ版に

鑑賞前から興奮しているわけですが、

昭和を代表する複数の殺人・誘拐・監禁事件を絡め、

物語を展開していくという地繋ぎな作品構成に期待は募るばかり。



 

そんなことも相まって、映画秘宝「呪怨」特集内に並んでいた

事件を元にした2つの映画を鑑賞してみましたので

そのうちの1つをざっくりとレビューします。

 

 

1965年に起きた「女子高生籠の鳥事件」を基にした小説の映画化

『完全なる飼育』

公開日:1999年1月30日

上映時間:96分

 

見知らぬ男 岩園に突如誘拐された高校生のクニコ。

「真の愛」を求める岩園によって監禁生活を送ることになったクニコだったが、

岩園の優しさに触れる内に彼女の心境にも変化が表れていくのだった。




拉致監禁事件の加害者と被害者が奇妙な愛情関係で結ばれ

映画のタイトル通り「完全なる飼育」と話題になった

1965年発生の女子高生籠の鳥事件を基にしたR指定映画。

 

中学生ぐらいからタイトルのインパクトもあって気になっていたのですが

映画秘宝の呪怨特集を読んだこのタイミングで鑑賞しました。

 

陽の沈みゆく河川敷を走る高校生が突如背後から襲われ、ストップ!

デカデカと荒々しいフォントでタイトルという画の迫力と

端的にこの作品のジャンル、そして、結末までも語ってしまう

このオープニングにはグッと引き込まれました。

 

そこから謎の男 岩園と女子高校生 クニコの監禁模様が映し出されていきます。

「被害者と加害者」という関係で岩園とクニコを描き出す前半と

2人が「恋人」さながらの同棲生活を送っていく後半という

はっきりと2部構成がなされているわけですが、

面白いのはジメジメとした空気感と、サスペンスさながらの揺らぎある展開で

岩園とクニコの関係の変化を描いていく前半です。

 

礼儀正しくもはっきり加害者=監禁する側で居続ける岩園と

何とか逃げ出そうとするクニコを映し出していく前半ですが、

暴力的な要素が皆無な上、2人の心理戦がコミカルにも

またはこの時点で恋人的にも見えるという異様さを放ちます。

 

「相思相愛」を臨む岩園に対し、

「あなたを好きになるはずがない」というクニコの攻防は

「飼うか、飼われるか」とも言えばいいのでしょうか。

 

ここで面白いのが、

クニコを飼いならすために「優しさ」を示す岩園に対し、

岩園の「優しさ」を利用して飼いならしもするクニコ

という状況に反してコミカルな要素が設けられているのが面白い。

 

この展開があることで、

作品は「加害者と被害者」の関係から脱し始めており、

また、「尻に敷かれる男」というコミカルさが恋人的なイチャイチャにも見えてくる。

劇伴演出も含め、ヒリヒリした緊張感を保ちながら

異様な軽快さを見せていくのが前半の魅力でした。

 

そして、画から伝わるジメジメとした空気感

前半では多くのシーンが「雨」に設定されていることに加え、

岩園が汗や濡れ跡の目立つシャツを着用していることも相まって

ジメジメとした空気感が見ているだけで伝わってくる。

 

個人的にはこのジメジメ感が

「どう接したらいいのかに悩む」まるで童貞のような岩園の心情と

次第に生活に慣れ始めてしまうクニコの揺らぎ、陰鬱さを演出していたように思える。

 

実際の事件同様、2人は旅行に出かけるのだが、

このシークエンスのクライマックスに置かれている

「手錠ごっこ」にはしびれました。

 

「手錠ごっこ」と称して岩園に手錠を付けたクニコは

颯爽と旅館を後にします。

 

「彼女(クニコ)の笑顔は嘘だったのか...」

そんな岩園の切ない気持ちを醸しながら、

言わばゲームに勝利したクニコの姿をかっこよく映し出します。

 

監禁とは言え切なく、カタルシスも放つこのシーン

「映画あっという間だったな~」と思ったら、まだ半分なんですね(笑)

 

後半では岩園とクニコの恋人というより肉欲的な関係が描かれていきます。

濡れ場なのに劇伴を外してくる異様なバランスもさることながら、

岩園のアパートの大家、住人による一種の「集団喜劇」によって

後半は前半よりコミカルさが増しているような印象を受けました。

 

ただ、このコミカルさこそがミソだったと思います。

クライマックスではついに警察が2人の関係を引き離す、

作品も落ち着いた演出がなされるようになっていくのですが、

聴取されるクニコの表情と言葉に、恐怖を呼び起こされるわけです。

それこそ「飼育」という言葉が思い浮かぶといっていいでしょう。

 

合えて作品ルックに見合わぬコミカルな演出で

岩園とクニコの異様な関係を強調したともいえる本作は、面白かった。

 

そして、個性的なキャスト陣です。

それこそ「笑ってるのか怒ってるのか」わからない竹中直人の演技は

岩園というキャラクターにはまっていたし、

北村一輝や渡辺えり子、泉谷しげるなど存在感の強い脇役もいい。

 

そして、なんといっても「小島聖」です!

少女らしい無垢さもあればミステリアスな雰囲気も醸し、

後半では肉欲的、大人なエロテックさも発揮していく。

スタイルも驚くほどよく、男として見入ってしまいました。

 

いままで「なんとも言い難い女優さんだな」と思っていましたが、

確実に見る目、変わりました。

 

加害者と被害者の関係の「異様さ」を

見事に演出して見せたラブドラマ。

 

幸せとは?愛とは?

価値観が変わったであろうクニコが

岩園を待つような、

いや、岩園に拉致される過去を想い返し、

寂しさに駆られてしまうようなラストは味わい深い。