本日鑑賞したのは
前代未聞の豪華キャストによる意味不明な殺戮映画
2004年公開作品
『IZO-以蔵-』
公開日:2004年8月21日
上映時間:128分
幕末のテロリストにして今にも処刑されようとしていた岡田以蔵。
しかし、死する前に彼の魂は怨念と化し、
以蔵は過去、未来を移動しながら国家、軍事、宗教、組織など
立ち塞がる人々をただひたすに殺戮していくのだった。
幕末の殺し屋=岡田以蔵をモチーフにした
三池崇史監督によるバイオレンス・アクション。
二度と実現不可能な豪華キャストが集結していることで話題をさらいました。
中学生のころDVDレンタルで鑑賞してから、
この作品は『最も意味不明な映画』として自分の中にありました。
多少なりとも成長した今見直したら少し理解できるのかと思い、
久々に鑑賞したのですが...
相変わらず『謎映画』としかいいようがありませんでした!
邪念と化した岡田以蔵がタイムスリップを繰り返し、
立ち塞がる様々な人間を問答無用で斬殺していく。
展開・物語はこれ以外ありません。ただそれだけなのです。
一応にも日本の最上位に存在するであろう
「殿下」と呼ばれる人間を長とする組織に辿り着くことを
目的としたようなストーリーが組み込まれてこそいるものの、
不死身且つ時代を瞬時に移動することのできる以蔵をはじめ、
様々な権力の長が時代を超え集っていると思われる奇怪な日本最高権力組織、
現実と地獄が混在されているような世界観など
抽象的な描写、象徴的な設定ばかり。
加えて、戦火の琵琶法師の如き歌手 友川かずきが都度登場し、
彼の言葉を吐き散らすような歌と歴史の記録映像のモンタージュが流される。
難解というより理解しがたいものとなっています。
いくら考えようと岡田以蔵の破壊欲求の真意にも
岡田以蔵を殺そうとする数多くのキャラクターの総意にも
辿り着くことができませんでした。
「日本を根底から破壊しようとする」=以蔵と
「日本の権力や思想に執着する者」=統治組織との戦いとして補完したくとも
そう一括りにできない人物も多く悩ましいし、
性描写が印象的に描かれており、回帰欲に近いものまで描かれているような気もするので
もう、どう見たらいいのかわからない!
不確かな存在を崇める僧侶たちをインチキと呼び、
一方的な執着で恨みを持つ女に「お前の○○○は臭い」と嘲笑うなど、
時に以蔵の放つ言葉は確信を得ていたり、
時に人間であるからこその皮肉を覗かせもする部分は印象深いのだが、
そこから一貫した「何か」を読み取れもしないので...どう見たらいいのですか!!
無間地獄とでも言えよう物語は『考えるな、感じろ!』として置いておこう。
とにかく意味不明な映画としか言えないのだが、凄まじいのが
ホンモノの『豪華キャスト』の集結です。
ビートたけし、桃井かおり、松方弘樹、片岡鶴太郎、内田裕也、緒形拳、
原田芳雄、大滝秀治、樹木希林の他、
日本映画を支えてきた名友や個性派キャストが集結しています。
そんな彼らの登場シーンはほんの僅かなもので、
登場して数分の後、以蔵に斬られて果てていくのですが、
一瞬であろうとも放たれる存在感は凄まじい。
こんな豪華な面々を一本で見ることができる映画なんて
後にも先にもこの作品しかないでしょう。
そんな豪華キャスト陣が華を咲かせる「死に様」の連鎖こそが
この作品でもっとも明確は魅力であることは間違えありません。
そして、個人的にこの作品を嫌いになれないのが
固定概念にとらわれない、アートにも思える映像の数々です。
一度痛い目に会いながら、十数年忘れることがなく、
今もう一度見てしまったのも、この映像の力と言っていいでしょう。
どういうものものかと言えば、簡単に言えば「過去と未来の混沌」です。
幕末の以蔵が過去のみならず、現代を象徴する繁華街やオフィス街を彷徨い
立ち塞がる人間を殺戮するという映像に加え、
おそらく江戸末期~明治初期ほどであろう景色に特殊部隊SATが乱入すれば、
歌舞伎町に御用提灯を手にした治安維持組織が群れを成して登場するなど、
現実では決して見ることのできないアバンキャルドな映像が満載となっている。
個人的に最も印象深いのは、
大型トラックが走り狂う現代の橋の上で
新選組の土方歳三、沖田総司と以蔵が刀を交えるシーンだ。
新選組が好きという事もあるが、
近代日本を象徴しているともいえるトラックの乱れ走る橋という
非現実的且つスタイリッシュな舞台設定で
歴史上で対峙構造にありながら、刀を交えることがなかったともいわれる
新選組と岡田以蔵が相まみえるというドリームマッチが描かれるこのシーンは
悔しいけど中二病の自分は目がハートになりましたよ。
あと、以蔵がサラリーマンを問答無用で切り裂いていくシーンは
今見てもフレッシュで衝撃的でしたね。
そんなようにこの作品でしか見ることのできない、
見方を変えれば現代アートにも思える非日常的な描写の数々は
一度見たら忘れられない、確かに印象を残る映像だ。
オススメ一切しませんが、
このキャスト陣の異常なまでの豪華さと
あまりにアバンギャルドな映像の数々!
予告編を見て、その片鱗を味わうだけでも面白いかもしれません。
三池崇史監督作品は本当に癖が強いから見たくなってしまう。
近々、『ビジターQ』も見ようと思いますし、
震えますが頑張って『牛頭』にも手を伸ばしたいと思っています。