股間に熱湯ぶっかけ映画『沙耶のいる透視図』(1986年公開)レビュー | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

名作映画を見すぎてありがたみがなくなってきてしまったので

いろいろな意味で『ヤバい!』日本映画を漁ってみました。

今日はその中から、

センセーショナルな性題材で製作から3年間公開されなかった

1986年公開作品

 

『沙耶のいる透視図』

公開日:1986年10月17日

上映時間:102分

 

ビニ本でカメラマンをしている橋口は、

編集者である神崎から妖しげな魅力を放つ女性 沙耶を紹介される。

謎めいた沙耶に魅入られ親しくなっていく橋口だったが、

沙耶と神崎には壮絶な過去があり…

 


第6回すばる文学賞を受賞した同名小説の映画化。

性を通してストーリーテリングで

男女3人の謎めいた関係

ミステリアスにサスペンスフルに描かれていきます。

 

高橋ヨシキさんが自身のトラウマ映画に挙げていたことや

股間に熱湯をかけるシーンがあると聞き

『どんな映画だよ!』と思って当たり屋気分で鑑賞したのですが、

この映画好きです!

 

セクシャルな映画であり、異質な性の在り方も提示する本作は

間違いなく『観る人を選ぶ一作』であることは明白ですが、

『性行為と愛の関係』に以前から疑問を持っていた自分には

とても味わい深い作品でした。

股間に熱湯をかけるシーンは滑稽でもありましたが、

自分はかなり共感したし、そこに真実の愛すら感じました。

 

ビニ本のカメラマンが編集者である神崎によって

謎めいた女性 沙耶と巡り合わされたことをきっかけに

謎めいた三角関係劇が始まっていくわけですが、

『1人の女を2人の男が取り合う恋愛』なんて

簡単なストーリーテリングなんて皆無!

 

距離が縮まれば縮まるほど遠のいていくような

橋口と沙耶の恋愛ドラマや

不気味なまなざしで過去を語る神崎の人物像。

詩的にも聞こえてくるあるセリフ回しや

ホラーな雰囲気すら漂わせてくる映像演出。

 

シチュエーションはトレンディドラマなのに、

もっと言えば、ただの寝取らせ願望AV的でもあるのに

男女3人の関係性が常に揺らぎ続けるサスペンスフルな展開

釘付けになってしまいました。

 

後半ではそんな橋口、沙耶、神崎の関係性が

神崎と沙耶の過去によって動き出していくのですが、

そのセンセーショナルな性への価値観に衝撃を受けました。

※正確に言えば価値観ではなく、彼らの愛の在り方ですが(笑)

 

拒食症や不感症、近親相姦といった要素

作品全体に散りばめキャラクターの背景にしていく部分にも

時代的に驚かされましたが、

本当の愛を問いかけてくるようなメッセージ性の味わい深さに魅了されました。

 

性を嫌う沙耶とそんな沙耶を愛そうとする神崎の物語は

異質であり不気味ですが、彼らの言動や想いが

簡単に言えば、

『なぜこの人物はこうなったのか?』かが

非常にロジカルに語られていくので没入感は凄まじいものでした。

もちろん、自分が近い価値観を持っていたというものもあるでしょうが(笑)

 

この作品はあまりに純粋でこの上なく残酷な愛と性の物語といえるでしょう。

 

そんな強烈な存在感を放つ沙耶と神崎に対して、

主人公 橋口は観客と同じような立ち位置に置かれています。

良い言葉でありませんが、ある種の健常者である橋口の視点で語られていくからこそ

本作はわかりやすく、衝撃さを増しているように思えました。

 

そして、衝撃的であり美しいのがラストです。

 

裏本で逮捕されていた神崎が出所し、

彼の最後の撮影に呼ばれる橋口は

そのモデルが沙耶であることを知らされます。

神崎の仕組んだシナリオがすべて明らかとなり、

物語は橋口のカメラファインダー越しに終わりを迎えるのですが…

 

このラストシーンだけで映画としてOKといいたくなるほど

なかなかに美しい映像演出で

橋口、神崎、沙耶の愛の物語を終わらせます。

ライムスター宇多丸さんが『後味最悪』と言っていましたが

自分はかなり味わい深さを感じました。

特に神崎の偏りながらも純粋な想いには。

 

普通の恋愛映画に飽きた方にはおすすめです。

 

そして、この作品でデビューした高樹沙耶さんです。

演技はガチガチでうまいと言えるものではないのですが、

その美貌ミステリアスな存在感は群を抜いており、

過去から性を避ける沙耶という難しい役どころを見事に演じきっています。

正直、こんな女性が身近にいたら惚れますね。

 

『股間に熱湯かける!?どんな映画だよ!』と思っていましたが

かなり自分の好みに合った作品でした。

『丑三つ村』はすぐにでもDVDを売りたいですが、

本作のDVDは絶対に手放したくありません!