映画雑レビュー『アイリッシュマン』87点 & 『アナと雪の女王2』75点 | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

最近、全然映画の感想を書かず、
もう溜まりに溜まっているのですが、
2本ざっと感想を書きます!

まずは、マーティン・スコセッシ監督最新作にして
ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、アル・パチーノら
ギャング映画で一時代を築いた名優が名を連ねた
Netflixオリジナル映画

「アイリッシュマン」


トラック運転組合で働いていたフランクが小さな犯罪を機に
マフィアのボスと運命的な出会いを果たし、
殺しを請け負うことで名声を得ていく本作は、
実際にあったジミー・ホッファ暗殺の真相を語りあげます。

これは必見と言う以外ないでしょう!
マーティン・スコセッシのクラシカル且つ古びない演出と
登場すれば画面を掌握する名優たち演技アンサンブルは
誰が見ても大作中の大作。

そして面白いのはギャング映画を
老いや孤独というテーマで描きあげ、
ギャング映画ジャンルそのものを終焉させようとする
物語とストーリーテリングの味わい深さ。

緊張感だけでなく抜け感もある板挟みブロマンスに
思いの掛け違いから不和に陥っていく家族ドラマ。
そんな往年のギャング作品を彷彿とさせる物語を
晩年フランクの贖罪意識で回想し語っていくという作品構成は
これまでのギャング映画にはない悲哀を醸し出す。

忠を尽くしたくとも共に歩んだ仲間は亡くなり、
家族に対し贖罪を募らせても拒絶させる現実。
どれだけ想いを巡らせようと時は戻らず、
死を待つだけの老人と成り果てるフランクを語るクライマックスは
あまりにも切ない。
回りに分かり合える者がいないフランクの孤独を
作中で最も印象的な『ドア演出』で締め括る部分だけとっても
マーティン・スコセッシは恐ろしい存在だ。

そんな作品を『死』が現実味を帯だした監督、名優らが集結し、
自分達が築き上げたギャング映画の中で仲間に別れを告げ、
ひとつの時代に幕を下ろそうとするようにも見える本作は
映画外からの文脈も含めて非常に味わい作品だった。

ただ個人的にはやはり3時間30分は長いものだった。
会話劇が苦手ということもあるだろうが、
人によって好みは別れる作品だろう。
それでも映画としての存在感はハンパじゃない!

★★★★★


そして次は、前作を越える興行スタートを切った
『アナと雪の女王2』


アナと確固たる絆で結ばれ幸福な日々を送っていたエルサが
ある日、不思議な歌声を耳にし自分の出生の秘密を求め旅に出る。

キラーチューンとしか言いようがない楽曲の数々に
アニメーションならではの映像表現とミュージカル演出。
現代的な女性像でプリンセスをブラッシュアップすることで
幅広い年齢層を虜にした『アナと雪の女王』。
エルサが王国を抜け、一人『Let It Go』を歌い上げるあのシーンは
映画史に残る名シーンでしょう。

そう、簡単に言えば前作の大ファンな訳で
本作に対しては『作らない方がいいんじゃね』と
鑑賞前は思っていたわけですが...
結果から言えば『うーん』な作品でした。

続編としてのみならず前作が描いた世界観の余白、
エルサというキャラクターの背景を補完することで
総体的に『アナと雪の女王』という作品を完成させようとするような
作品構成は流石なディズニーなのですが、
テーマパークのアトラクション映像作品のようなストーリーや
物語ではなくキャラクターのユーモアで
娯楽性を押し出すシークエンスの数々に
ディズニー映画に対する苦手意識が再燃...

そして、最多るは『ハッピーエンド!』と言うオラフに
『オラフ、これハッピーエンドじゃないよ』といいたくなる結末。

本作は様々な現実問題のメタファーとなる
国家間同士の思惑、対立が背景に置かれているわけですが、
罪の代償を受けることもなければ、謝りもしない。

要は加害者がなにも知らぬ被害者に真相を打ち明けることないため
表向きなハッピーエンドにしか見えないわけです。
昨今のディズニー作品が素晴らしかっただけに
ここがなにより飲み込めなかった。

ネタバレを避けるためオブラートに包むが、
最後、森の長老と王国の上官兵士が同じ景色を見るシーンで
上官兵士が真相を打ち明けようとすると
長老が『もうわかってる。過去はいいじゃないか』と言う
みたいなシーンがあったらなと。

そうすれば罪は罪でも、隠さず認めることが大事というような
メッセージにもなっただろうし、
序盤の森内での対立も感慨深くなった気が。

一人で悩み込むエルサにアナが『隠し事はなしって決めたでしょ』
的な絆を表す台詞が序盤にあるのだからさ。
罪の代償=惨事を免れるのだから、
せめて贖罪意識だけは表だって見せてほしかった。

まぁ、いろいろ言っておりますが、
本作も楽曲が素晴らしい!
中でもやはりメインテーマ『Into the Unknown』!
エルサが謎の歌声に促されるシーンで流れるのだが、
楽曲内でエルサの歌と謎の歌声が次第に共鳴していく作りは
本当に痺れる。
謎の歌声の正体を匂わせる演出もそうだが、
歌の中で否定から肯定、自分に素直になっていくエルサの感情を
コーラス演出で語りあげる部分に流石の一言。

また、エルサだけでなく、
何者でもないアナに存在価値を与えてみせる。
ふたりを引き裂くことでそれぞれに自分と向き合うパートをもうけ、
そこでキャラクターの成長を語るのはバランスがいい。

言いたいことあるけど、結局いい作品でした。

★★★★