映画雑レビュー『生理ちゃん』62点 くるーきっとくるー♪絶望脱力エンターテインメント | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

『生理ちゃん』
公開日:2019年11月8日
上映時間:75分




ーーーーあらすじーーーー
編集者として忙しい毎日を送りながら、
恋人とのプライベートを順調に送る米田青子。
そんな彼女の前にまた あいつ がやって来る。

「生理」というデリケートな題材を
ポップなキャラクターとユーモラス且つパワフルな比喩で表現し、
第23回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した
小山健の同名漫画を二階堂ふみ主演で実写映画化。
監督はTV業界で活躍してきた品川俊介。


★★やはりアイデア勝利!絶望をエンターテインメントに!★★
二階堂ふみファンである自分は本作の製作が発表された後、
漫画『生理ちゃん』を読んだのですが...クスクス笑ってしまった(笑)

『男の自分が笑えるのだろうか!?』
『楽しんだら不謹慎ではないか!?』
とこの作品を読む前は多少ビクついてしまったわけだが、
様々な生理現象を『生理ちゃん』ら異色キャラクターの言動に落とし込み、
絶望がエンターテインメントに仕立て上げられたフレッシュな世界観と、
深刻な『性の悩み』を繊細に語りながらも
漫画らしい外連味をもって笑いで落としてくれる作風に
まず素直に楽しんでしまった。正に傑作漫画でしょう。

しかし、この作品は『漫画だからこそ』の部分も大きく感じる。
小山健さんの愛くるしい『絵』で描かれたからこそ
可愛らしさに富んでいた漫画『生理ちゃん』ですが、
実写化されれば不可避なリアリティーの向上から
題材の生々しさが出てきてしまうのではと...
ギャグ描写に弱い邦画であれば尚更不安は募るものです。

そんな期待と不安を抱いていた実写化『生理ちゃん』でしたが、
『生理ちゃん』らキャラクターが
漫画同様に作品を牽引していく前半はやはり面白いものでした。
実写化されようと薄れない小山健さんのアイデアの凄みを痛感するもの。
ただ、『生理ちゃん』という存在が薄れ、
ごく普通の人間ドラマに走り出す後半には
個人的に物足りなさを覚えてもしまった。
しかし、この後半は悪い改変とも言えない。


★★『ため息』リアクションが語る生理喜劇★★
まず誉めるべくは『生理ちゃん』をはじめとするキャラクターを
CGではなく『着ぐるみ』や『人形』で実写化した部分。
異質感と絶妙なチープさ、CGでないからこそ醸される暖かみは
漫画のポップな世界観を見事に再現してみせる。

加えて、その一番の強みは『表情がない』ということ。
原作においても表情が大きく変化しないことによって
キャラクターは愛らしくも憎たらしい存在となり、
それこそが作品のシュールな面白味でもあった。

無駄にCGに頼らない本作はそのシュールさも引き継いでおり、
キャラクターは悪意ない純粋さを帯おる。
可愛くないのに癖になる。まさにユルキャラというところ。

『迷惑だけど悪いヤツではない』『憎たらしいけど憎みきれない』
そんな生理現象キャラクターに振る舞わされる奇妙な生活模様は
この作品唯一無二の魅力でしょう。

体のダルさを『のし掛かる生理ちゃんの体重』描写で。
腹痛を『生理ちゃんの生理パンチ』で。
生理中の女性の悩みをそんなユーモアに描く作風はとにかくフレッシュ!
また、エロワードをひたすら言い続ける『性欲ちゃん』や
背中をひた向きに押してくれるような『童貞くん』という
男のどうしようもできない悩みを担うキャラクターも登場する。

男女が双方の悩みを楽しみながら理解できるのもこの作品の存在価値。
劇場は女性ばかりでしたが、
カップルで見に行くのも非常にいいかと。

生理現象を『キャラクターの仕業』としてロジカルに語る本作は
多くの人の共感を呼ぶものであり、
今後それらに現象に直面した時、『アイツがきたのか!』と
少しほっこりもしてしまいそう。
そんな『見た後世界が変わる』映画だ。

こんなように本作はかなりコメディ色が強い!
ただこれまでのギャグ作品群と違うのはリアクションでしょう!

ボケもツッコミがなければ大きな笑いにならないように、
とにかくリアクションは重要なもの。
本作でボケとなるのは間違えなく
生理現象キャラクターの出現や悪意なき言動なわけだが、
それに対するリアクション、そのテンションが低いのがこの作品の最たる魅力!

『おい!』ではなく『はぁ~』と『ため息をつく』ような
リアクションを繰り返す本作は、
それ自体に笑いの爆発力こそないものの、それが訴えてくる絶望感と
無表情且つ異質なキャラクターが醸す空気感や温度差のシュールさに
ついクスクスと笑いが漏れ出す。

ホラーテイストで恐怖感を煽りながら
驚くと真逆とも言えよう人物の『ため息リアクション』で
演出される生理ちゃんの初登場シーンの
拍子抜け感、最高の出落ち感は作中で最もたまらないギャグだった。

『ここ笑いどころです!』と笑わすのではなく、
あるあるネタで共感を呼び、笑いどころを見るものに託してくれるような本作は
大きなスベリを見せない。実写化に向いたギャグ漫画だった気がする。


★★原作のイメージとは異なる後半。しかし、意味もある展開★★
前半こそ生理ちゃんら異色キャラクターがコメディを牽引しくが、
後半は、恋人男性の娘に母として認めてもらおうとするも
うまくいかず悩み始める二階堂ふみ演じる青子のドラマと
伊藤沙莉演じる引きこもり女性 りほのラブロマンスドラマに
主軸が置かれ、『生理ちゃん』をはじめとするキャラクターは
その存在を潜め始める。

『生理』ではなく『プライベート』に悩む
2人の女性の物語にシフトチェンジしていくクライマックスは
どちらかといえばシリアスな雰囲気となり、
生理ちゃんをはじめとするキャラクターが醸すポップな世界観、
コメディ要素も皆無に等しくなっていくため、
正直、原作のポップな部分が好きな自分には
『なんでそうするかな』と思ってもしまった。

しかし、りほの物語はさておき、
青子の物語の中心には『生理』というものが存在している。
生理という現象から紐解かれる家族愛描写や
生理を通した絆にアプローチしていく後半は、
リアリティある実写化だからこそ意味を増しているように思え、
また、結末は今の潮流にのった現代的な女性像にも好感が持てた。

この後半で本作は存在価値を高めたと思う。

生理というものをポップなキャラクターとユーモラスな演出で
エンターテインメントに仕立てあげながら、
生理との向き合い方、つきあい方を語ってもみせる本作は
特に小中学校の女子が抵抗なく学べる作品に思えて仕方がない。
75分という短編という見やすさも持ってこいのはず!

教師の方々、娘を持つ親御さんは必見の作品です!


★★総評★★
スタッフ、キャストの本作に対する熱い想いは
この作品をみて理解できた。
映画としては決して面白い、傑作と言えたものではないと思うが
『楽しみながら学ぶ』一種の教育作品としては一級品!

戸川純の『玉姫様』をカラオケにいくたび熱唱していた自分を
恥ずかしく思ってしまった...

★★★