映画批評「新宿スワンⅡ」 83点 | SayGo's 映画レビュー

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勝手に映画鑑賞して
ダラダラとレビューします。

「前作が内紛であれば、本作は戦国」

 

ハチャメチャな制作進行を聞いていたので、

「どうなるのだろう?」と良くも悪くも本作の完成をワクワクしながら待っていましたが、

新たなキャストと新たなスタッフの参戦によってスケールアップに成功した作品。

 

歌舞伎町を拠点としたスカウト会社 新宿バーストが

勢力拡大のために選んだ島は、滝という男が仕切っている横浜だった。

会社のエース格へと成長した白鳥は滝との間に因縁を持つ関とともに

横浜へと足を踏み入れるのだったが、

ヤクザや警察との強いコネクションで土台を固めている滝の力は

ホームである歌舞伎町までを境地へ追い込んでいくのだった ―

 

「新宿スワンⅡ」

 

 

 

新宿・歌舞伎町を舞台にスカウトマン同士の抗争を描く

和久井健の人気コミックを実写映画化した第二弾。

監督は前作に引き続き 園子温。

綾野剛、伊勢谷友介などが続投ほか、

浅野忠信、吉田綱太郎、中野英雄など実力派キャストが参戦し、

新宿vs横浜の全面戦争を彩る。

 

個人的には拍子抜けだった印象の前作だったわけだが、

続編としてスケールアップを確かなものにしたのは

「横浜王国編」の実写化というチョイスと、

新たなキャスト、並びにスタッフの参戦による総合的なステータスアップだ。

 

人生のどん底にいた主人公 白鳥がスカウトマンとなり、

歌舞伎町を舞台にした縄張り争奪戦の中で成長していく前作は言うなれば「内紛」。

それを経て土台を築いた国が、他の国への進撃を目論み、全面抗争へと発展する本作は

「内紛」から「戦国」へと段違いなスケールの広がりを見せるため、

「横浜王国編」をチョイスしたのは続編としてベストなチョイスだった。

 

そんな国同士の戦いとなれば、相手の国の長が一目で「強敵」でつまらないわけだが、

そこをクリアした見事な「顔面力」のあるキャスティング。

睨みを利かせるわけでもなく、はたまた怒鳴り散らすわけでもなく、

その堂々たる佇まいで滝の持つ力、自信を見せる浅野忠信の演技は

横浜の王として確かな説得力を生んでおり、

また、それぞれのスカウト会社のバックにいるヤクザの顔として

吉田綱太郎、中野英雄を置くことで「新宿vs横浜」の抗争が

ただ言では済まないのだろうと予感させる雰囲気を漂わせていく。

 

「アウトレイジ」もそうだが、やはり顔面力のある実力派が華を添えたことで

前作とは比にならない重厚感が作品には携えられていた。

 

そこを盛り上げる衣装の澤田石和實の仕事も良かった。

スーツなどでビシッと固める新宿バーストに対し、

刺繍やカラフルな色使いで固められた横浜ウィザードの衣装は双方を区別するだけでなく、

若者色の強い横浜の狂暴性を派手さで表現しているかのよう。

 

中でも「これ何色だよ!どんな素材だよ!」と思わせる滝のスーツは印象深く、

それを着こなす浅野忠信は「殺し屋1」を彷彿とさせ、怖さが上乗せされてしまったw

 

そして、本作は主軸とも言える滝と関の物語が熱い男の人情を見せる。

ある出来事と誤った選択によって決別してしまった2人が

その拳で会話し、心を通じ合わせるドラマはほろっと来るものがある。

 

そんな男たちの戦いの裏で意地を見せる女の格好の良さも印象深い

山田優演じるママの覚悟ある行動、そしてその懐の広さが導く

ホステスたちの「白い巨塔」でいう総回診シーン。

「女なくして勝ちはない」そんなこのシーンは

「スカウト」をテーマ取った作品にはまっていたと思う。

ホステスの進撃を高い「ヒールを履いた足」の動きで見せるのも

園子温ぽくて好きだった。

 

前作がハマらなかった個人的な要因として「アクション」のつまらなさがあったわけだが

そこを補ったのがアクション監督に迎えた「るろうに剣心」の谷垣健二。

アクションの手数、バリエーションは彼の存在によって明らかな向上をみせ、

加えて、ホストの看板を崩壊させるという園子温のアイデアが生んだ中盤アクションは

「歌舞伎町の象徴が崩れる」ことで横浜勢力の進撃を意味しながら、

映像の派手さが作品の大きな見せ場となっていた。

 

もうドストライクな作品だったわけだが、ひとつだけ「え~」となったのは

良く分からない、物語とは全く関係ない「女性アーティストのライブシーン」

おそらくソニーが売り出しているアーティストの宣伝なのだろうが、

必要以上に時間を割いて見せられるそのシーンは完璧に作品の流れを止めていた。

無理くりな回想カットが挿しこまれていることから、

このシーンは監督もどうしようも出来なかったのだろうが・・・

 

 

「あれもこれも」と盛りだくさんなストーリーで荒い展開などもあるが、

テンポは非常にいいため133分という上映時間を長くは感じなかった。

間違えなく続編の成功例だろう。

 

★★★★★