「低予算だからこそ生まれた傑作」
新年1月1日に意気揚々とTOHO新宿へ行けば、
シネマイレージカードのポイントが3000Pも失効していた。
6000Pまであと200Pだったのに・・・
そんな中、今年の幕開け一本目に選んだのは
盲目の男と若者が密室で生死を分かつ極上スリラー。
腐りきった家庭を妹と出るため、
仲間とともに強盗で資金を集めていたロッキー。
これを最後と決め、大金を持っているという噂のある
目の見えない老人宅に忍び込むのだったが ―
「ドント・ブリーズ」
強盗に入った若者たちの盲目の老人家主との生死を賭けた攻防、
閉じ込められた家から脱出劇を描くスリラー。
「死霊のはらわた」の監督サム・ライミのプロデュースのもと、
リメイク版「死霊のはらわた」のフェデ・アルバレスっがメガホンを取った。
容易に思えた「盲目」という障害を持つ老人宅からの強奪。
その攻守が瞬く間に一変し、密室ながら激しいサバイバル劇を展開する本作は
宇多丸さんの言葉を借りるのであれば「ナーメテーター」ものでもあろう。
発達した聴覚と若き日に培った軍戦術を駆使し、
動じることなく反撃に転じる老人は猫を被った「デアデビル」。
若者が勝てるわけなんてほぼ0%なわけです。
その「0%」という絶対的な力差がこの作品の肝であり、
ホラー作品のような恐怖とスリラーの緊迫感をこの上なく演出している。
また、低予算というものをカバーする数々の演出・アイディアがこの作品は秀逸。
流れるような一連のカットで若者たちが家に侵入する様子を見せるわけだが、
それが舞台となる家の構造を説明、または説明しないことでミステリーを漂わせ、
そして、後に物語を展開、若者たちを境地に追い込む要素を
さりげなく見せ伏線を張り巡らせていく。
注意深く鑑賞し、その要素に気付いていれば
最悪の事態を想像してしまいハラハラ感を感じることが出来るし、
決して気付いていなくとも、「これさっきの!」という伏線回収の見事さに歓喜する。
「後出しジャンケン」の全くない作品だと思う。
地下室という新たなステージが解放され新たな「事実」が明かされると、
若者と老人の善悪ラインがまた不明瞭となり、どちらも善と悪が混在していく。
観ているとどちらにも肩入れできないわけだが、それが
「とにかく家を出なければ」という目の前のサバイバル要素を再浮上させるので
物語への没入感はドンドン高まっていくことだろう。
異常な「子」への執着で老人への嫌悪感を高め、
ゴールかと思われた安全区域が戦場へと変わる面白さや
「音」を逆手に取った反撃、
そして爽快な止めを刺すという勧善懲悪な展開は「うえっ!」と吐き気を覚えながらも気持ちが良い。
次回作を匂わせるラストは不穏でよいが、
この作品は低予算だからこそ生み出された傑作なのでここで終わらせてほしい。
ツッコミどころがないわけではないが、
息を顰め、呑まずにはいられなくなる若者たちに
シンクロせずにはいられなくなる本作は是非映画館で。
★★★