わたしは昔、
絵を描いていました。


絵を描くのが大好きでした。


高校を卒業して、
グラフィックデザインの
専門学校に行きました。


手で描く絵を学んでも
食ってはいけないだろうから
パソコンで描く絵を学ぼうと思いました。


二年生になったら
イラストレーター専攻があって選んで、
先生がとっても良くって
ほんとに楽しい学生生活でした。


卒業してから
のらりくらりしていたら
勤めた会社で心も身体も病みまして、
資金も底をつきました(増やせない借金)。


病気で新しい事を学ぶ
体力もお金もなかったので、


なんとなく続けていた
風俗穣を本格的にやって
恋愛&セ◯クスカウンセラーに
なろうと意を決してカミングアウト。


その時だ。


そんな苦しい人生になったのは、
クソみたいなカスなプライドのせいだと
思ったんだ。


だから、
わたしを支えていた
“できること”を捨てた。


描き溜めていたイラスト原画や、
子供が産まれたら見せようと思って
集めていたら絵本たち。


ごっそり捨てたんだ。























あれから12年経った。



いつか、いつか、

また始めようと思っていた

絵を描くこと。



なんだか今思い出した。



なぜならうちに

一部屋だけ空いてる部屋がある。



あちこちに散らばっていた

画材をとりあえず集めて

この部屋に置いた。




今だ。



今すぎる。



幸せな花嫁になって、

理想のお母さんになれて、

本当に叶えたかった

絵を描く夢は今叶える。



震える。





『いらないものを捨てる』って

使わない物だけじゃなくて、

自分を支えているものだったりする。



あの時、

このまま持っていても

ダメにしかならないような

気がしたんだ。



本気で叶える気もないくせに、

なんやかんやと『特技あります』

みたいな顔して生きてく未来を想像したら

吐き気がしたんだ。



いらない。



力はわたしにある。

絵は捨てたって描けなくなるわけじゃない。



いつかまた会おうね、って、

わたしは違う道を選んだんだ。



本当に大切なものを捨てたら、

本当に大切なものに出会う旅になった。



そして今、また帰ってきて、

『久しぶり』って自分に言ってみた。



吉野さやか