王冠の銀河 | 天氣後報

天氣後報

東京の隅っこにある小さなカフェ周辺の人・事・モノ

ある宵。

学校からの帰り途。

些細なことで友だちと言い合いになった。

ぼくにとって、どっちだってよかったんだけれど、ニコラが「自分だけがわかっている」といったふうな言い方をするから、意地になってしまった。

ニコラはぼくを置いてどんどん歩いて行ってしまったから、ぼくはわざとゆっくり・・・・・。


歩いているうちに、だんだん腹が立ってきた。

だから、角を曲がって、いつもは通らない公園を突っ切って帰ることにした。


公園に着いた時は、陽は沈み、辺りはすっかりと青い色に染まっていた。


楠の樹の陰から、見慣れない少年が現れて、

「ようこそ、月光幻燈祭へ」と、ぼくに小さなチケットとバッジみたいなものを手渡した。

人違いじゃないかと思ったものの、「どうにでもなれ」って気分だったし、月光幻燈祭なんてちょっと面白そうなので、少年にいわれるまま、チケを受取り、バッジを腕につけて会場へ向かった・・・・・・



(略)



不思議な少女の踊りが終わった。


あれ?

2列前に見覚えのある後姿がある。

「ニコラ??」


「ユータも来てたのか。」


大きな満月が楠の上から顔をだして、周囲を明るく照らした。

「いつの間にか、時間が経ってしまったみたいだ。早く帰ろう。」


ぼくらは急ぎ足で公園を後にした。


「あ。バッジ。返さなくてよかったのかな。」


そういって腕につけたバッジを見ると、小さな古い王冠だった。

「なんだ。ただの王冠じゃないか。」


ぼくがバッジをはずして投げ捨てようとすると、ニコラがそれを制した。


「ちょっと待って! これ、何か入ってるよ!!」


王冠をひっくり返してみると、そこにはキラキラ輝く銀河が見えた。

小さな小さな銀河だった。



天氣後報-王冠銀河


天氣後報-王冠銀河


天氣後報-王冠銀河



銀河色の蛍光レジンに緑と青に蓄光する粒を埋め込みました。

王冠のサイズは直径約17mm。

ラベルも作ろうと思ったら、何やらうっすらと文字が刻まれているので、このままにしました。