KentStudioで以前制作していた鉱石ラヂオ。そのアンテナは街中に張り巡らされている電線を利用していました。しかし、数年前に銀座の月光荘でルーチカのイベントを開催した際、ゲストとして鉱石ラジオを出品したKentStudioさんを愕然とさせた事実がありました。
その当時、すでに銀座では電線は地中にあったのです。これでは空中を飛び回る電波を集めることはできません。
その後、いくつか制作はしていたのですが、都内幹線道路沿いでは次々に電線の埋没工事が進められ、裸になった電柱を多く見かけるようになりました。
それで、KentStudioでは現在、鉱石ラヂオの制作を休止しているわけですが、まだ制作をしていた頃に、ラヂオで使用する鉱石の発注を受けていました。一番検波が上手くいくのはデコボコした黄鉄鉱の小さな欠片でしたが、
「金属色の鉱石で検波できるのは、なんだか当たり前のような気がするだろうけど、紅亜鉛鉱でも検波ができるので、ぜひ、入手して欲しい。赤や緑の透明な石で検波ができるときっと感動すると思う。」
と、頼まれていたのです。
紅亜鉛鉱の組成式は ZnO……つまり酸化亜鉛なわけで、亜鉛が酸素と結びつく、、、つまり錆びたらできるということなのだから、世界中のいたるところで採集できるんじゃないかと最初は思いました。しかし、天然のものはアメリカニュージャージー州のフランクリンやスターリンヒル鉱山とその周辺でしか発見されていません。
確かに、自然環境に単体亜鉛はまず存在しないし、閃亜鉛鉱も風化すると酸化亜鉛ではなく、水亜鉛土や他の二次鉱物に変わってしまうことを考えると、天然の紅亜鉛鉱は稀少なのかもしれません。
探していた時には数万もする天然の大きな塊(しかも、あまり美しくないので購入はしませんでした)や、2cmほどで数千円する薄い緑色のものにしか出逢えませんでした。一応、その緑色のものは少し入手してみたのですが、
「真っ赤で透明なのが欲しい」とずっと思っていました。
ところが、ラヂオ制作を休止した今頃になって鉱石ラヂオにうってつけの細かい結晶の欠片が届きました。
これはポーランドにある亜鉛の精錬工場の煙突から採集されたものです。
清廉される時に亜鉛を含んだ蒸気が煙突の中を通過します。その際に急激に冷やされると酸化亜鉛として煙突の内壁に付着するのです。
その名称からもわかるように紅色が一番多く、ポピュラーです。
光に翳すと深みのある赤とも琥珀色ともいえる美しい色で、部分的に色が濃い部分、赤が強い部分などがあってとてもきれいです。
しかし、紅色だけではありません。
恐らく、亜鉛以外に鉄や銅が混入したのでしょうか(まだ確認はできていませんが)、薄いペパーミントグリーンや空色など、いろいろな欠片の紅亜鉛鉱があります。形状も細長い柱状やふごつごつしたもの、水晶のような片側が錘形になっているものなどさまざまです。
今回は大きな欠片は1つ。小さな欠片はいくつかを小さな丸いアルミ缶に入れて販売することにしました。
ごくごく小さな欠片は木枯らしのエチュードに採用してみます。