漆黒の無重力空間を浮遊するH2O……
そんなイメージで、インテル標本箱を作りました。
販売用はこれに小さなラベルが入り、硝子の蓋が付き、オプションで真鍮のフックをつけます。
自分用にはこれにハーキマーダイアの粒を投げ入れ、硝子の蓋を接着し、細い皮の紐で首から提げて歩いてみました。
「また、ヘンなものをぶら下げてきたね」
まっとうな社会人である友人とは、興味の対象が全く異なります。それでよく30年近くも仲良しでいられたなあと思いながら、一応説明をしてみます。
「これはね。成層圏外の水の結晶なのだよ。」
ラベルにはちゃんとインド産の魚眼石と書いてあるのですが、鉱物に全く興味がない友人はラベルなんて見るはずもなく、
「まじ??」
「うん。特別な条件が重なると、溶けない結晶になるんだ。だから水晶って水の結晶って書くでしょ。」
酔った勢いの口からでまかせ。
それでも、友人がどこかでそんなことを話したら大変なので、最後に種明かしをしました。
「本当は魚眼石っていう石なんだ。」
しかし、もともとあまり興味のないジャンルの話。すでに人の話など聞いていない友人には、大切な「本当の話」は伝わらないままとなりました。
どこかで「宇宙空間を浮遊する水の結晶を持っている人」の話を聞いたら、それはわたしのせいかもしれません。