偶然所有していた活版活字の小さな鉛合金の「はんこ」と、数年前、とあるイベントで大量に出逢い、それ以降、意識してこの活字の活用を考えるようになりました。
最近は「活版印刷」を見直そうという流れとも遭遇しますが、個人的には活版印刷の復興そのものを願ったり、目指しているわけではなく、「こんな印刷もあったんだ」ということをできるだけ末永く伝達することや、現存する「活版活字」を物的証拠として残したいと思っています。
「モノ」が生き続けるためには「役目」が必要です。つまり、「活版印刷のモノたち」の新しい使い方を考えています。
これまでの活版印刷には活字のほかに印刷機械が必須でした(当たり前ですが)。
まず、この機械の存続はむずかしいと思い、「活字」そのものを個人レベルで楽しめることを模索し、「手捺しスタンプ」として個人が所有し、楽しめるといいなあと思っています。
それが正しいか否かは別として……。
そんな思いを消極的に吐き出している中で、店終いする活版印刷屋さんを紹介されました。
店終いに至るまでには、さまざまな理由があるのですが、根本には「活版印刷が現代の実用印刷には適していない」ということだと思います。
うかがった、都下の町。その印刷屋さんはすっきりと片付けられ、役目を終えた機械が、埃一つなく、凛とした姿で置かれていました。
この機械のメンテナンスをした直後、今後は機械のメンテ&修理をすることができないと聞かされ、新しい仕事を請けることができなくなったそうです。
お客様から依頼された作業中に機械が故障しても修理できないからです。
そのまま、店終いすることを決意した店主に、「機械が故障したらそこまででかまわない」と伝えて、最後の仕事をしていただきました。
お願いした名刺が出来上がる頃、引き取れる分だけの活字を受け取りにいきます。