イリノイ州産八面体蛍石 | 天氣後報

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螢石 アメリカイリノイ州では、昔から色とりどりの透明な蛍石がたくさん採れました。
1835年。白人が経営する最初の鉱山が開かれました。当初は、ここで採れる方鉛鉱にわずかに含まれる銀を抽出することが目的で、一緒に採れる蛍石は何にも使い道のない、ただ綺麗というだけの存在でした。

1880年代になって、鉄の精錬技術が発達し、蛍石は一躍工業原料として注目されるようになり、蛍石を採掘する鉱山がたくさんできました。
 砕石加工のときに生じた蛍石の破片は、州道のいたるところで、舗装用の砂利として使われました。鉱山に通じる道は、ほとんどが蛍石を敷き詰めたもので、キラキラと光り、それは美しい道であったと言われています。
 現在ではイリノイ州の蛍石鉱山はすべて閉山されてしまいました。それと共に、八面体に劈開する職人も姿を消してしまいました。

わたしが幼い頃。お祭りの縁日に鉱石を売る露店がありました。大きくて高そうな紫水晶がどかんと鎮座する隅っこで、研磨加工された鉱石が売られていました。その中で、八面体の蛍石をみつけ、買ってもらったのが自分の鉱石を手にした最初です。
アセチレンランプの灯かりに照らされた薄い桃色をした小さな蛍石は、ちょっと儚げで、どんな宝石よりも素敵に見えました。

その後、鉱石の小売を始めてからも、蛍石は好きな鉱石の1つです。
中国産のものは綺麗に研磨され、きっちりと正八面体をしていますが、どこか雑でも、イリノイ州産の劈開を利用して八面体に割ったもののほうが好きです。

 最近は、あまり綺麗なものはみかけなくなっていたのですが、最近、サイズは小さいですが綺麗なものを入手することができました。アルミケースに詰めて早速店頭へ並べてみました。