社内アンケートの想い出 | 狭山与太郎のどですかでん

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斎藤兵庫県知事のパワハラ問題はまだ続いています。

そもそもの発端は前県西播磨県民局長の男性職員が24年3月中旬、一部の報道機関などに斎藤知事に関する告発文書を送付し、同年4月には県の公益通報制度を利用し文書と同内容を通報したことから始まりました。

県は告発を公益通報として扱わず、文書を把握した直後から告発者の特定に動いたのです。

このいきさつを知るに及んで、ふと、私がまだ若かりし頃の会社での出来事を思い出しました。

あんまり関係ないかもしれませんが…・

 

日本がバブル絶頂期だった頃のある日、本社の人事部が各職場の活性度調査というものを実施したことがありました。

各職場の管理職と一般社員とのコミュニケーションがうまく取られているか。職場の風通しが良いか、一般社員の管理職に対する不満が無いか?などについて各社員に細かいアンケート調査を行いその結果をスコアー化し各職場の活性度を人事部が公表するというものでした。

管理職にとっては言わば部下からの勤務評定というわけです。

人事部から各社員にアンケート調査用紙が配られ記銘で答えるわけですが、その記入された用紙を管理職は絶対に見てはいけないということになっていました。

そうしないと正直に回答する人が減ってしまいますからね。

記入済みのアンケート用紙は封筒に入れ部署ごとに集めてまとめて人事部に提出することになっていました。

 

その当時の課長は部下から慕われ人気も実力もあり、上司からの評価も高い人物で将来を嘱望されて出世コースを歩んでいる人でしたから当然職場のスコアーも高く何ら問題がないだろうと誰しもが思っていました。

ところが調査が終わってアンケート用紙が回収された数日後、課のリーダー会議でその課長は「先日のアンケートを見たが、課員の中に一人だけ非常に低い評価をした者がいたためにこの課の評価全体が低くなってしまった。」と、ある課員を名指しで非難したのであります。

「彼一人がいるために課全体としての評価が低いという結果となった。

この結果はおそらく皆さんも不本意であろう。

彼は自分やこの課に対して不満を持っているのだからこの課から出て行ってもらうことにした。」

と言うのです。

私は「えっ、ということは課長はアンケートを見たんですか?見ちゃいけないことになってたんじゃないんですか?」と追及してしまったのです。

私は名指しされた彼の日頃の仕事ぶりからして彼を移動させることに関しては特に異論はありませんでした。

しかし、それは通常の人事異動としてやればいいことであって、約束上見ちゃいけないというものを見たというルール違反をしたことについてその課長を非難したのであります。

その課長は怪訝そうな顔をするだけで何も答えませんでした。

その時私の意見に同調した人は一名のみ。

その他の連中は何も言いませんでした。

どのように感じていたたのかはわかりません。

その数週間後、その課員は別な部署に異動となりました。

彼は高学歴で家柄もよろしく、プライドが高く、頭が悪いわけでも無いし、やる気がないわけでもないのに所謂「使えない人」でした。

職場で彼自身があまり評価されていないことに常々不満を持っており、それは課長のせいだと思っていたのでしょうか、その不満をアンケートに一気に吐き出したのではないかと思われます。

移動を命じられた数年後彼は会社を辞めました。

 

今考えても未だにあのアンケートの実際の主旨は何だったのかよくわかりません。その後一回も実施しませんでした。

各職場の不満分子をあぶり出すのが本来の目的だったのでしょうか?

だとしたらその課長はその主旨に沿っただけだったのかもしれない。

当時は企業のガバナンスなんてものは勿論、内部告発制度もないし、パワハラなんて概念すらも存在しませんでした。

実力社会だなんて社員の評価制度は厳しさを増す一方、その割に上に行くほど評価の基準は曖昧で結局は人的繋がりが全てという時代でした。

現在はどうなのでしょうか?

昔は会社で「目安箱」なるものを設置したり、社内LANが普及すると、メールなどでの告発を受け付けたり不正の摘発に様々な試みがなされましたが何か功を奏したという話は聞いたことがありません。

特に金融関係は横領などが発覚しても内々で処理してしまうため表面化しないだけなのかもしれません。

今回の件や鹿児島県警の隠ぺい問題など自浄能力のないところでいくら告発制度を導入したところで結局は絵に描いた餅。

現在の日本では正直に告発した人が割を食ってしまうことが今回の件で更に明らかになってしまいました。

組織や国家の不正を告発する人は「裏切り者」として烙印を押され不利益を被るのは日本だけではないようです。

時には逆に逮捕されたり命を奪われたりする例は世界中枚挙にいとまはありません。