オーベルマンの谷は、私にとっては人生を表現したような作品です。
誰しも絶望や挫折を経験し悩みを抱え、孤独を感じることがある。それでも雲間から微かな光が見え、己の内なる声と対話し、希望を見出していく。
そんな感情をそのまま音楽によって表現されていると私は感じます。フレーズは言葉として聞こえ、不安、悲痛、ため息、葛藤、喜び等、内面的な心の動きが表現されています。

巡礼の年 第一年 スイスはリストとマリー・ダグー伯爵夫人との逃避行中のスケッチを基に作られた旅行記でもありますが、「オーベルマンの谷」は、フランスの作家セナンクールの小説「オーベルマン」からインスピレーションを得て作曲されています。

その内容は不安、絶望といった心境が描かれ、最後は主人公の死で終わり、19世紀前半のヨーロッパに自殺熱をまきちらせた作品ですが、まだ24.5歳、大恋愛中の若いリストは、絶望から立ち上がる、希望に満ちた結末を創り上げました。

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人生、辛いことも悲しいこともあるけれど、この曲を聴くと最後は元気をもらえるんです。悩んでいたとき、この曲に癒され慰められ、勇気付てもらっていました。

当時のリストと同じ歳の今、この曲を演奏することができます。精一杯弾かせて頂きます。