今日は胆のう切除について書こうと思います。

 

 胆のう疾患はいろいろありますが、その中で『胆のう粘液嚢腫』という病態があります。これは胆のう内の胆汁がゼリー状に固まってしまう病態です。

ほっておくとどこかのタイミングで胆管が詰まってしまい、胆のう炎を強く起こします。黄疸(尿が黄色くなり、ひどくなると皮膚や白目が黄色くなります)が出て、嘔吐が激しくなります。

胆のう粘液嚢腫は超音波検査ですぐ診断できるのですが、問題は治療のタイミングです。

胆のう粘液嚢腫が見つかるタイミングは二つあります。症状が出たタイミングで検査をして見つかるパターンと健康診断で肝臓の数字が高くて超音波検査をした結果見つかるパターンです。

 後者の場合は年齢やご家族の希望を聞いて内科で見ていくのか手術で切除するのか相談になります。これはご家族が手術(麻酔)のリスクを背負うのか、手術をしないで状況が悪くなり発症する可能性のリスクを背負うのか、相談でよいと思います。

問題は前者です。すでに症状が出ている場合です。胆のう粘液嚢腫の手術なのですが、手術手技自身はよいのですが、症状が出ている時に手術をした場合の死亡のリスクが高くなります。なのでできれば内科で悪い状況を少しでも良くして落ち着いてから手術をしたいと思ってしまいます。しかし内科を選択した結果、胆管が物理的に詰まっているため改善せず状況がもっと進行し、麻酔のリスクがもっと上がってしまうということが起こり得ます。何か検査で一旦回復してくれるのか悪化するのかわかるとよいのですが…もちろん胆のう破裂がある(胆汁性の腹膜炎所見がある:虚脱した胆のうを認める)場合などは分かりやすいのですが・・・。

 

 当院ではこのジレンマをご家族と相談して一時的に内科をするのか外科をするのか相談をさせていただいています。幸いこれまで皆さまご説明の上、ご判断くださって助かっています。

 

この子は、入院下で内科治療した結果状況が改善してきたので、そのままオペをさせていただきました。

胆のうの色が悪く、パンパンですね(黒っぽい袋が胆のうです)。

 

 

切除した胆のうです。少し切開したところ、ゼリー状の胆汁が出てきています。

全部切ってみるとボール状に固まっていました。

 

症状のある胆のう粘液嚢腫のオペの後はいつもドキドキですが、無事に退院してくれました^^