※澤田事務所管理人が更新します。

 

 

この「連載プレイバック」は

1982年7月8日から1989年9月28日まで

雑誌「スコラ」に掲載された

笑人間を加筆訂正したものです。

 

 

本日は1984年3月22日 

笑人間「桂三枝(現・桂文枝」(#28)前編です。

 

 

テーマ:いま、1年ごしのアイデアが実現

 

(本文)

桂三枝(現・桂文枝)さんが、

思いつめたような目をして私(※澤田隆治)のそばへ

寄ってくると、一寸押さえたような声で

「澤田さん、新しいのが出来ました。きいていただけますか」

 

 

 新しい創作落語が出来たのを知らせてくれたのだ。

 

 

去年の芸術祭の大衆芸能部門で大賞を受賞した

「ゴルフ夜明け前」が出来た時もそうであった。

 

 

 

一昨年の12月、大阪の今宮戎神社の「福娘コンテスト」が

行われた高島屋ホールの楽屋で、リハーサルが終って

ほっと一息ついた瞬間に桂三枝(現・桂文枝)さんが

私(※澤田隆治)のそばに近よってきて

「澤田さん、新しいのが出来ました。きいていただけますか」と

言ったのだ。

 

 

「今度はどんなネタ?」

「今までのとは全然違うんです。

ゴルフ夜明け前という題をつけようと思うんですけど」

 

 

「ゴルフ?そういえば最近ゴルフにこっとるらしいねェ、

ハーフ、どれ位で廻るの?」

 

 

「大したことないんですけどね。

坂本龍馬と近藤勇がゴルフを

やったかもしれないという仮説をたててつくったんですけど」

 

 

「おもろいやないか、そんな話、すきやねん、

ジンギスカンは義経やとか、西郷隆盛は

ナポレオンやとか・・・・・」

 

 

「いや、そんなんと違いますねん」

 

 

 なんだか創作落語風になったが、

噺のスジを聞かされて私(※澤田隆治)は

「ホンマにおもろいやないか」と思い、

「落語だけではもったいないでェ、

ドラマになるなァ、

新手のSF青春大河落語ドラマをつくれるぞ。

 

 

まず手はじめに花王名人劇場でその落語、立体化してみようよ」と、

興奮していうと、桂三枝(現・桂文枝)さんも

「よろしいなァ」と夢みる瞳をしたものだ。

 

 

明けて去年の1月10日、十日戎の宝恵駕パレードの

先頭をきって歩いてくれた桂三枝(現・桂文枝)さんと

出発点の大阪ミナミは宗右ヱ門町の大和屋の前で会ったら、

「ゴルフ夜明け前、やってみました。うけましたでェ。テープ聞いて下さい」と

カセットテープを渡された。

 

つづく

澤田隆治