この「連載プレイバック」は

1982年7月8日から1989年9月28日まで

雑誌「スコラ」に掲載された

笑人間(※著者:澤田隆治)を加筆訂正したものです。

 

 

本日は1983年(昭和58年)1月13日 

笑人間「香川登志緒」

(藤田まこと,白木みのる)(#13)後編です。

 

 

テーマ:「てなもんや三度笠」のコンビひそかに復活」

 

 

(本文)

香川さんの仕事ぶりはまさに

笑芸作家にふさわしい。

 

「松竹新喜劇」の脚本を書き、

「花王名人劇場」の構成を手がけ、

やすし・きよしの漫才を書く、

大阪の舞台で演じられるものは

大劇場であろうと小さなホールであろうと

必ずみていて、いま大阪で

どんなことが進行中かを知りたければ

香川さんに訪ねるのが一番確かである。

 

 

褒める場合もけなす場合もはっきりしていて、

これは私が毎日のように顔を合わしていた

30年近く前から少しも変わっていない。

 

 

もう少しは、まるくなってもいいお年なのだが、

あのラジカルさは死ぬまで続くのだろう。

 

 

その香川さんが藤山寛美さんのことを

語る時はまさに敬愛する兄に対するようで、

聞いていても気持がいい。

 

 

喜劇の名人と笑芸の達人が

情熱を燃やしておもしろい芝居を

つくろうとぶつかりあうさまが

伺われて、羨ましかった。

 

 

この情熱を若い芸人達にも

向けてほしいと私は願った。

 

 

今日も道頓堀をセカセカと

少しズボンをずりさげ気味に

歩いているに違いない

 

 

香川登枝緒さんの晩年運のよさを

いただくべく、古典的名作になってしまった

「てなもんや三度笠」の作・演出コンビは

「花王名人劇場」でひそかに復活しているのだ。

 

 

おわり