この「連載プレイバック」は
1982年7月8日から1989年9月28日まで
雑誌「スコラ」に掲載された
笑人間(※著者:澤田隆治)を加筆訂正したものです。
本日は1982年(昭和57年)11月11日
笑人間「春風亭柳昇」(#9)中編です。
テーマ:「落語でも取材してつくることがあるんですね。」
(本文)
その「日照権」いささかテーマは古くなったが、
それでも現代の生活が登場人物一人一人に
裏打ちされていて、古典を下敷きにした構成が
しっかりしているだけにナマな感じが
きえて安心して笑えるネタである。
「花王名人劇場」で放送すると大評判であった。
その録画の時の楽屋で、初対面の私(※澤田隆治)には
柳昇師がなんとなくとっつきにくくて、
おそるおそる「海外旅行のネタ、面白いですね。」というと
「私、海外旅行にいったことないんです。戦争では行きましたけどね」
「じやァあのネタ、どうしてつくったんですか」
「このごろは落語の連中も海外へ遊びに行くでしょう。
楽屋で土産話をきいてつくったんです。
ヘンなところありますか」とあべこべに
きかれていささかあわてて
「いや、べつにヘンなところはないようですけど、
師匠、機会があったら一度成田へ行ってみませんか」
「いいですね、海外旅行しないで税関みれるんだったらお願いしますよ」
ひょんなことから柳昇師と私(※澤田隆治)は
朝8時半に上野鈴本の前で待ち合わせて9時の
スカイライナーで成田へ向うことになった。
成田税関の広報にお願いして正式の成田空港見学である。
つづく