この「連載プレイバック」は1982年7月8日から1989年9月28日まで
雑誌「スコラ」に掲載された笑人間(※著者:澤田隆治)を加筆訂正したものです。
本日は1982年(昭和57年)10月14日
笑人間「横山やすし」(ビートたけし、島田紳助)(#7)前編です。
テーマ:「やすしのもうひとつの’’おもしろさ’’」
(本文)
「やすしがおもしろい」と言う人が増えた。横山やすしのことである。
「当たり前や、あれは漫才の天才やから」と
私(※澤田隆治)は答えることにしているが、
その人達が「おもしろい」と感じるのは
漫才におけるやすしではなくて、一人で
インタビューを受けたり、対談したり、
司会をしているやすしなのだ。
今、横山やすしがおもしろいのは、
思ったまま喋るからである。
ビートたけしと島田紳助が思ったまま喋って
おもしろい漫才の代表のように
思われているが、とんでもない。
あれで二人ともなかなか計算しているのだ。
喋っていいことといけないことを
ちゃんと知っていて、しかも客の反応をみながら
ときどき限界を超えてみせる。
ネタにはうるさい「花王名人劇場」(※フジテレビ系関西テレビ)に
出演する時など、テレビでとても放送できないようなネタを、
出てくるなり客にカマして、
びっくりさせておいて客をひっぱっていく。
あとでカットしてもいいように
その分だけ長くやるという
配慮もちゃんとする。
芸能界のことだけでなく、世の中の移り変わりもちゃんと勉強していて、
いま自分がどんな立場にいるのかを常に冷静にみているのだ。
つづく