この「連載プレイバック」は1982年7月8日から1989年9月28日まで

雑誌「スコラ」に掲載された笑人間(※著者:澤田隆治)を加筆訂正したものです。

 

本日は1982年8月26日 笑人間「芦屋雁之助」(#4)前編です。

テーマ:「出会いの不思議さ、出会いのすばらしさ」

 

(本文)

 人と人との出会いが、1回しかない人生の過ごし方をほとんど決めてしまうのではないか。

そんな出会いの楽しさ、出会いの素晴しさを鮮やかに私に感じさせてくれたのは、

芦屋雁之助さんであった。

 

 

もう四年前になる。「花王名人劇場」のドラマ企画は、『東芝日曜劇場』

『ドラマ人間模様』という日本のテレビドラマを代表する番組を裏番組に、

自信作を並べて敢然と立ち向ったが、なかなか思うような視聴率が取れず、

年が変って思いもかけず漫才企画が当ったので番組自体はやっと一息ついたが、

ドラマ企画は完全に行きづまって混迷のうちに半年が過ぎていた。

 

 

そんなころのある朝、銀座の電通での企画会議に30分ばかり早くつきすぎた

私(※澤田隆治)は、もう一度数寄屋橋の方へ戻って旭屋書店に入った。

 

 

ここには芸能関係の本だけ集めた書棚があって便利なのでよく覗くのだが、

ふと横をみると芦屋雁之助さんがいるではないか。

 

 

「雁ちゃん、お早うございます」と声をかけると「おうおう」と思いがけない

出会いにびっくりした顔でふりむいた。

 

 

東京の劇場に出演中で、楽屋入りの前に脚本を書く資料をさがしに書店に

入ったのだという。

 

 

 

芦屋雁之助さんは俳優であるだけでなく、演出もすれば脚本も書くのだ。

なんといっても昭和30年代の後半から昭和40年代にかけて、劇団「喜劇座」を

率いて、6年間も、あの「松竹新喜劇」「松竹家庭劇」と道頓堀で肩を並べて

頑張った座長さんなのである。

 

 

つづく

澤田事務所管理人