この「連載プレイバック」は

1982年7月8日から1989年9月28日まで

雑誌「スコラ」に掲載された笑人間(※著者:澤田隆治)を

加筆訂正したものです。

 

本日は1982年7月8日 笑人間

「今いくよ・くるよ」(#1)中編です。

 

テーマ:

「いくよ・くるよさん、

お二人のマンザイおもしろいね」

 

「ウッソー」

 

(本文)

二人にとって頼れるのは、お互いだけ、

細いいくよと太ったくるよが、いつも身を

よせあい、ひたいをよせあって一緒にいる

姿は、誰もよせつけないという決意のように

とられて、二人は、いつも二人っきりで

あった。

 

「いつまで辛抱できるやろ」

みんなそう思っていた。

 

二人はコツコツためて、京都の木屋町に

「ファイト・ファイト」という小さな

スナックをもった。

 

仕事がない時、京都へ帰って、

遅くまで店をあけていた。

ボチボチ客もついた。

 

そんなことが、

「あの二人、やめよるんと違うか」という

噂になった。

 

そんな時、漫才ブームが突如はじまった。

 

これまで名前をきいたこともない

漫才コンビが、集団で登場し、

あっというまに笑いの渦をまき起こした。

 

いつのまにか私(※澤田隆治)は「花王名人劇場」を

ひっさげてその中心にいた。

 

やすし・きよしを先頭に、B&B、

ツービート、紳助・竜介、ザ・ぼんち、

のりお・よしお、男コンビしかみえて

いなかった私の視野に、組合せに色気がないというのでひっかかったのが、

今いくよ・くるよである。

 

大阪を離れて十年近くたつ私は、

いくよ・くるよがどんな漫才をするのか、

全く知らなかった。

 

つづく