この「連載プレイバック」は1982年7月8日から1989年9月28日まで雑誌「スコラ」に

掲載された笑人間(※著者:澤田隆治)を加筆訂正したものです。

 

本日は1982年7月8日 笑人間

「今いくよ・くるよ」(#1)前編です。

 

テーマ:

「いくよ・くるよさん、

お二人のマンザイおもしろいね」

 

「ウッソー」

 

(本文)

 今いくよ・くるよに幸運はずいぶん遅れてやってきた。

 

京都の女子商業高校のソフトボール部のキャプテンとマネージャーという関係が、漫才コンビとなって、十年以上がたっていた。

 

もう三十はいくつか過ぎてしまった。

やめたいと思った。

 

でも、このままでやめるのは口惜しいという思いが、決心させなかったのだ。

 

噛んで捨てるような言い方で

「おもろない漫才やなァ」という声が、

舞台で漫才をやっている二人にきこえた。

 

次の出番の漫才コンビの無遠慮な大声である。

 

師匠の今喜多代は、少女のころから

漫才の天才だっただけに、少しもうまくならない弟子にそのいらだちをかくさなかった。

 

「あんたら、

ちょっとも笑いのとれん漫才やなァ」

 

この二つの声が、いくよ・くるよの漫才を

ズバリ表現していた。

 

                 つづく