異国びと | 澤武紀行オフィシャルブログ Powered by Ameba

異国びと

長いフライトを終え、列車で自宅に向かった。
大きなトランクを二つ引きながらの、列車への乗車は、ちょっときついものがあった。

また”戦場”に戻るかと思うと、少し気が重かった。

ふとある男性と目がった。どうやら、南米から来た人のようだった。
大荷物を抱えた僕を見て、同じ旅人だと安心したのだろう。切符を片手に僕に質問をしてきた。

我々の乗る列車は、10分以上の遅れがあり、定時に入ってこなかったのでが、不安だったんだろう。

どうやら、ドイツ語も英語も出来ない様子だ。しかし、行き先を指して、真剣に問いかけてくるその男性に、昔の自分の姿が重なった。

余ほど心配だったのだろう、僕にぴったりとくっついて乗車してきた。
異国の地で、言葉も出来ない状況では、藁をもつかむ思いだったに違いない。

列車が出発して、30分おきに、自分の降りる駅はまだかと聞いてくる。
異国びとの降りる駅は、僕がおりる駅の、5つほど前。
3時間の間、30分おきに、ジェスチャーで、まだまだ、と言っていた光景は、
他の人が見ていたら、微笑ましい光景だったかもしれない。

異国びとの降りる駅が来た。彼はにっこり笑って、おぼつかない英語で”ありがとう”と言って降りて行った。

もう二度と会うことのないこの異国びと。一期一会の思いが身に沁みた。