ルテチウム-177-PSMA
Adenoid Cystic Carcinoma Research Foundationに書かれている開かれた治験で
ルテチウム-177-PSMAがありました。
ルテチウム-177-PSMAといえば、以前西郷輝彦さんが海外で受けていた「最新の前立腺癌治療」です。
前立腺癌の表面によく発現してる抗原(PSMA)を認識するリガンドに放射性核種のLu-177を標識し、
去勢抵抗性に(ホルモン治療が効きにくく)なった前立腺癌にβ線を浴びせる治療です。
今一つ分かりにくいですよね。
抗がん剤に期待する事と言えば、癌細胞に効果をなるべく発揮(目的とする作用を発揮)し、
正常で健康な細胞には作用を起こさない(副作用が少ない)事があります。
PSMAは正常な細胞にはあまり発現していなく、前立腺がんの細胞表面に発現しています。
(正常な前立腺などにも少量発現)
理屈上では、PSMAが発現している前立腺癌だけを攻撃します。
この治療の副作用で、血液毒性(貧血や血小板減少)が約10%に見られたものの、
重篤な副作用は比較的少なかった。
PSMAという分子は唾液腺や涙腺の細胞にも発現しているため、
口の渇き、悪心(おしん)、疲労感などが見られたという。
この副作用がヒントになったのだと思いますが、
唾液腺癌にPSMAを利用した治療が出来るのではと考えてくれた研究者や医者がいたようです。
PubMedという医学系論文検索サイトで”psma adenoid cystic carcinoma"と入力して検索してみました。
すると現時点で18編の論文が検索されました。
2016年頃からACCにPSMA発現を報告している論文が出始めております。
そして、2022年総論(今までの論文のまとめ)なども出ております。
総論の内容として
・PSMA はACCや唾液腺癌で発現している
・PSMAで標識したPET検査により既存の画像検査よりACCの病変を見つけられる
・ルテチウム-177-PSMAは、PSMAを選択的に標的とする低分子リガンドにルテチウム-177というβ線をだす核種を
結合させて静脈から身体に投与
・ACCで発現しているPSMAにルテチウム-177-PSMAが結合する事で、ACCを放射線治療攻めする
現在、オランダと中国で2020年~2021年から治験が進んでおります。
ルテチウム-177-PSMAは海外では去勢抵抗性前立腺癌に多数治療されている様子ですが、
ACCではまだ少数例の症例報告しか無いようですが、治療効果も一部確認されています。
日本にもPSMA PETやルテチウム-177-PSMA治療が導入されようとしております。
ルテチウム-177 標識 PSMA 特異的リガンド(Lu-177-PSMA-617)を 用いる核医学治療の治験適正使用マニュアル(第 1 版)がでております。
希少癌であるACCにPSMAによる検査や治療が、世界で(日本で)導入されるかは現段階で不明です。
でも、少しずつ検査や治療が進めば嬉しいなあ。