落語感想文、落語の感想を書いてますが「正月だから餅の話でも聞きますか」と今回次回は餅がタイトルに付く噺を選びました。だから華々しく黄金餅ですが、黄金魂の影響強すぎて湘南乃風を感じてしまいますが餅は江戸の風を感じる名作ですね。
目黒に黄金餅と言う店で繁盛する人の由来話となる「悪巧みもの」「葬儀もの」といったジャンル分け出来ますが「江戸前もの」も入れましょう。

最初に聞いたのは『古典落語入門』みたいなCDの中に入っていた古今亭志ん生のものでした、その後立川談志のものも入手しましたがこれまでにその二人のパターンしか聞いたことがありません。これまで聞きたい噺家でCDを集めていたからでしょうか。

黄金餅には好きなシーンが2つあって、死んでしまう西念と言う坊さんの家がある下谷の山崎町から木蓮寺のある麻布までの道のりを喋る早口みたいな所と、麻布の木蓮寺のお坊さんが深夜に来たもんだから酩酊状態でそんな中で読まれるゆっくりとしたお経のシーンです。

今回、これを書く上で気付いたのは今まで集中して黄金餅を聞いてなかったと言う話(笑)。落語を深く愛する皆さんには怒られそうですが私は「志ん生落語を寝たい時に聞いたりしてます」。黄金餅は正にその代表で内容をしっかり把握したのは今回初めて。思えば、何度も何度も『黄金餅ってどんな話か忘れたから聞いて見よう』と聞いたところでかわいらしい猫みたいな志ん生ボイスで夢うつつになり、なんとなく目覚めていたのが好きな二つのシーンだったようです。

立川談志は弟子に「落語に必要なのはリズムとメロディだから俺のリズムとメロディで覚えろ」と言った逸話がありますがきっと志ん生のリズムとメロディは自分に心地良いのでしょうと思ったら実はその立川談志の黄金餅でも寝てたわけですから、そもそもこの噺のリズムとメロディが寝るのに心地良いのかもしれない。

とはいえ、もう大丈夫。想像の中で小判型のお餅にきな粉をまぶしてそうな黄金餅が売り出された理由も、いきなり西念が死んだ理由も分かりました。そして銭と一緒に飲み込んだ2貫の餅は7.5kg。きっと寝込んで死期を悟った西念なりに誰にも自分の財産を悪用されないためにやった手段が実を結びませんでした。哀れなもんです。

ちなみに立川談志版は志ん生版をベースに好きな下谷から麻布までのルートをさらった後に翻訳して今で言うとどこなのかを説明してくれる。下谷の山崎町は今で言う東上野4丁目から麻布の木蓮寺は談志曰く麻布プリンスホテルに当たる、なんなら麻布プリンスなんて無いから更に調べるとフィンランド大使館なのだそう、距離にして10kmある。個人的に都内を歩いてる方だから聞いてるだけで情景は浮かぶが談志の言う「現代で言う」と言う表現も昭和の話で京成デパートとか神田の交通博物館等の懐かしい固有名詞が多い。更にアップデートしている立川流の噺家もいそうだが音源化はされてないらしい。

ちなみに木蓮寺、なんか聞き覚えあるなぁと思ったら「死神」


で『あじゃらかもくれんてけれっつのぱぁ』と言う呪文で死神は消え失せるの「もくれん」だわ。ただ関連性はわからない、お釈迦様と蓮の花は関係が深く木彫りの蓮もたくさんあるでしょうから、でも私が聞く黄金餅で志ん生が演じる木蓮寺の坊さんは『あじゃらかもくれんてけれっつのぱぁ』と言って客席を沸かせます。黄金餅もまた色んな人の演じ方を見てみたい落語であります。