それからというもの、佐藤くんは頻繁にメールをくれるようになった。
ある日の夜中、佐藤くんから電話が掛かってきた。
「今からお前ん家に行くから」
「待ってよ、今日はこれから彼氏が来るから!!」
「今日どうしても会わないとダメなんだよ」
「いやいやいや、彼氏が来るのに、なんでよ、やめてよ」
「今から終電に乗って行くから、絶対行くから」
そういって電話が切れた。
まずい・・・
そうして、佐藤くんはほんとに終電でやってきてしまった。
彼氏はまだ来ていない。佐藤くんを外で待たせた。
顔を見ると、普段とは違う、落ち込んだ顔。
「家に上がらせて」
「それは出来ないよ。彼氏が来るもん」
「そんな彼氏なんてどうでもいいじゃん」
どこまでもわがままを言う佐藤くんに少し戸惑いながら、断固私も拒否をした。
渋々タクシーで帰した後、すぐに彼氏がうちに来た。間一髪だった。
どんどん私にわがままになる佐藤くん。
私はどんどん佐藤くんを好きになるどころか嫌いになり始めた。
でも、なぜか憎めなかった。色々話を親身になって聞いてくれた。素敵な友達だった・・・
あるとき佐藤くんに恋の相談をされた。
バイト先の後輩の女の子が気になる様子。
私は彼を見守ることに。
その後で、2人で飲みに行ったという報告が。
なんだ、うまくいってるみたいじゃない。
でも、その飲み以降2人で何かをしたとか聞かなくなった。
そしてここ数ヶ月佐藤くんをバイトで見かけなくなった。
実家に帰省しているとか。
佐藤くんが実家に帰る前の最後のバイトの日、営業後に飲みに出かけた。
またまた朝まで飲み、佐藤くんが帰り際に少し話したいとのことでファミレスへ・・・
「俺、同期の皆がどんどん辞めてっちゃうのが寂しいんだ」
いつも強気な佐藤くんがこぼした弱音。
「昔はバイト中いつもバカやって笑ってたのに、今じゃあ新人ばっかでさぁ・・・」
「新人とだって絡むの楽しいじゃん」
「でも・・・昔とは違うんだよ。お前が辞めたらほんと辛くなる、だから・・・俺が戻ってくるまでお前も辞めないでくれよ」
「でも私、夜のお仕事一本にしようかと思ってたんだ」
「頼むよ・・・辞めないで」
少し声のトーンが低くなる。
少しうつむきながら鼻をすする音。
「分かった。佐藤くんが戻ってくるまでは私も頑張るよ!!」
「絶対約束だからな」
こうして私たちは約束をした。
そして彼のいないバイトが始まった。
あるときのバイト後、いつも実の兄のように私と佐藤くんの面倒を見てくれる社員の元宮さんと、もう1人の社員さんと3人で飲む機会があった。
元宮さんは私に相談したいことがあるとバイト中に言っていた。
「すぅちゃん(すっぱみのこと)俺、今の彼女と別れようと思ってるんだ」
「えっ・・・あんなに仲よさそうだったのに」
元宮さんは、私とタメのアルバイトの友達と付き合っていた。よく私と佐藤くんと元宮さんとその彼女と4人で飲みに行ったり、遊んだりしていたから正直ショックだった。
これには何かあるのだろう。
「俺、モトカノが忘れられないんだ。実は月1で会ってて、ヨリを戻そうと思ってた」
元宮さんは2年間付き合って、2年間ずっとモトカノを忘れられなくてそして、また付き合いたいという話。
私は何も言えなかった。
元宮さんの決めたことだから・・・そして、私も元宮さんに今の心境を明かした。
「私も今気になる人がいるんです」
「佐藤くん?」
首を横に振る。
「なんだぁ、佐藤くん落ち込むよー」
「なんでですか?」
「あいつ、『俺はいつでもすぅちゃん一筋ですから』って俺に話してたよ」
んっ???
おっ???
確か、佐藤くんは後輩が好きだったはず・・・
「佐藤くん後輩の子が好きだって言ってましたけど」
「いや、その言葉を聞いたのはつい最近だよ」
そんな言葉聞きたくなかったよ。
なんで今更まだ私のこと好きだって言えるの。
私は、ぼろぼろの起き上がりこぼしのように、こんなにも気持ちがぐらぐら不安定で、黒い悪魔なのに・・・
佐藤くんは私のことを、ふわふわしてる白いマシュマロのように思ってるんだ・・・
どこをつついてもぷにぷにで、どこを見ても真っ白けっけで、食べたら中からイチゴジャムがとろっと出てきて、中味まで甘い・・・そんなマシュマロみたいに。
確かに佐藤くんから告白されて、心がときめかなかったと言ったらウソになる。
でも、私の立場を考えてくれなくて、強引に私の心の中に入ってくる佐藤くんにちょっと気が滅入って、そんなときに気になる女の子ができて応援しようと思ってたのに・・・
複雑な気持ちになった。これから佐藤くんにどんな顔をして会えばいいのだろう。
あんな言葉聞きたくなかったよ・・・・・・・・ほんとうにほんとうに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・