■当スクールで用いている歌唱訓練の段階について。 SOS学習モデルと名付けて解説しました。

 

訓練法

学習における習得ステップモデル(SOS学習モデル)
この項目における学習項目
SOS学習モデル
感覚の段階
知覚認知と理解の段階
獲得の段階
成功率向上の段階
安定使用とコントロールの段階
無意識使用の段階
声の獲得段階と機能拡張段階

この項目の到達目標

到達度確認
SOS学習モデルを意識しながら訓練ができる
各段階のステップアップに必要な行程が理解できる
様々な声において、獲得段階か機能拡張段階かが把握できる

 

◆SOS学習モデル

 感覚→知覚認知→獲得→成功率向上→安定使用とコントロール→無意識使用の6段階
 学習心理学における技能学習の3段階をさらに細分化した物。
 未覚得な発声やテクニックを獲得するのは、必ずこの過程をたどる事になる。


◆感覚の段階

 →目標の音声情報を無意識の状態で入力する段階。
  感覚 = 様々な刺激を入力しているが、それを感じている事が意識出来ていない状態。
  例えば声帯閉鎖の音色が聞こえてはいるけど、それを認識出来ていない状態。
  全ての運動学習の第一段階がここであり、刺激閾値を超える全ての刺激は感覚することができている。


◆知覚認知の段階

 →目標の声やテクニックを正しく認識できている状態。知覚→認知と進む。
  知覚 = 感覚段階から目標音に意識を向けることで、刺激を認識できた状態。
  認知 = 認識した刺激を正しく理解出来た状態。
       認知バイアスにより、認知がゆがみやすいため注意。
  ※認知バイアス 事前に得た情報により、後続の情報への認知が歪んでしまう事。
  例)「裏声は単に弱い高音の事」という事前情報により、単なる弱い地声を「裏声だ」と錯覚するなど

  認知バイアスによる認知の歪みは、誤った知識によることが多い。
  正しい知識の獲得が、正確な認知への重要な要素となる。


◆獲得の段階

 →目標の声やテクニックが成功した段階。
  正しい目標認知と的確な即時フィードバックにより、技能の獲得が促進される。
  ・正しい目標設定         お手本を正しく認知することによって、目標を正しく設定できる
  ・的確な即時フィードバック お手本とのズレを、運動の直後に的確にフィードバックする
                     これにより即時の運動修正ができ、最適な技能学習が可能となる
   ※ボイストレーナーの主な仕事がこの段階となる。
    誤った認知と運動を修正することで、必要な技能を獲得してもらうことがレッスンでの目標となる。


◆成功率向上の段階

 →獲得した正しい運動の成功率を上げる段階。
  獲得当初は時々しか成功しなかった運動を、意識すれば必ず成功する状態に引き上げる。
  この段階では、反復訓練による運動の長期記憶化が重要となる。

  反復訓練中に運動が変化してしまう事が多いため、注意深くフィードバックすることが重要。
  この段階でも認知バイアスによって誤った運動を正しいと誤認してしまう事が多いため要注意。

 

 

◆安定使用とコントロールの段階

 →獲得した運動を自在にコントロールできる段階。安定使用→コントロールと進む。
  安定使用   意識をすることで、必ず獲得した運動が行える状態。
  コントロール 意識をすることで、獲得した運動を前後の状態に関わらず使用できる状態。

  例)ビブラートの場合
   成功率向上段階 意識をすれば時々ビブラートがかけられる
   安定使用        意識をすれば必ずビブラートがかけられる
   コントロール       意識をすれば、どんな発声中でもビブラートがかけられる

  反復訓練によって安定使用の段階が達成出来たら、様々な負荷をかけてコントロール力を向上させる。
  ビブラートの場合、速度を上げたり音域を変えるなどが負荷にあたる。


◆無意識使用の段階

 →意識をせずとも獲得した運動が自在にコントロールできる段階。
  この段階が訓練の最終段階となる。

  発声歌唱訓練においては、この段階の達成には小脳と喉頭のリンク強化が重要とされている。

 ・小脳性運動 発声の調整は小脳によって行われていると考えられている。
  小脳の活動を活性化するには、高速の反復訓練による無意識下での発声調整獲得が重要。
  高速での訓練によって、思考をつかさどる大脳皮質の活動を低下させ小脳伝導路の賦活化を目指す。


◆声の獲得段階と機能拡張段階

 上記SOS学習モデルは、獲得段階と機能拡張段階の2つに大別できる。
 ・獲得段階      感覚~安定使用の段階まで
 ・機能拡張段階 コントロール~無意識使用の段階まで。

 発声歌唱訓練では、獲得した声の機能を拡張しながらさらに進化した声の獲得を目指していく。
 →獲得と機能拡張のどちらか一方ではなく、同時進行で訓練をしていく事が重要となる。

 

 

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