最近(でもないか)、よく耳にする表現に「マウントをとる」というものがある。ふと、これは英語でどういうのかな、と思った。スラング的な用法もあるようだが、慣用的なものをいちいち覚えるのは、つらい。
 『ビッグ・リボウスキ』(The Big Lebowski 1998というカルト的人気の映画がある。コーエン兄弟の監督作品で、主人公「デュード」はヒッピー崩れの無職のニート。彼のボウリングチームの仲間ウォルターは試合中、前妻から預けられたポメラニアンを試合に持ち込んだことをデュードに咎められ、抗弁しながら相手チームのプレイヤー、スモーキーに対して突然叫び始める。
 "Over the line!"(線を越えたぞ!)
呆気にとられる、デュード他関係者たち...
 このウォルターという人物のエキセントリックで自己中心的な性格、言動がこの作品のひとつの大きなポイントになっていると言っても過言ではない。
 公開当時はさほど興行成績が振るわなかったが、DVD発売以降若者を中心にカウチポテト的に火が付き、「深夜にテレビでやってると嬉しい映画」として、カルト的な人気を博した(今風に言うとチルアウトに最適な映画)。やはりそれはこのウォルターの言動等始め、ツッコミどころが盛り込まれているからだと言える。Youtubeでもコメント欄で面白おかしくウォルターにツッコむコメントが見られる。
「リーグ戦にこだわりながら、自分は20分遅刻してくるって、どういうこだわり?」
「スモーキー(相手チームのメンバー)についてでも、ルールについてでもなく、デュードに言い負かされそうになって、マウントを取る必要があったからなんとかしようとして叫んだだけ。元女房の尻に敷かれているのに」
などなど。
ここでの原文は、"Walter was losing an argument to the Dude and needed to assert (his) dominance in anyway he could..."とある。ここの"assert dominance"(優位性を主張する)が、幾分堅いにしても「マウントを取る」に相当する表現になるな、と思ったのである。
 たしかにこのウォルター、全編を通して絶えず他人に対してマウントを取ろうとし続けている。口癖は、"Am I wrong?, Am I wrong?" この秋、あなたもこの最高のチル映画を観てチルアウトしませんか?

(余談)ジェフ・ブリッジスが日本の野球選手、別当薫のTシャツを本作中で着用しています。他作でも着ているので、どうも私物のようですね。