途中でシナリオ変更を指示した者は断罪されるべき〜ドラクエモンスターズ3感想〜 | どらくえ考察ブログ

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がんだまぁBlogから派生したドラクエ考察ブログです。
かつてはアーケードカードゲームの日記に使っていたので過去記事に残っています。

ドラクエモンスターズシリーズは、GB版の1はどハマりしたものの2はスルーし、PS版の1・2で両方プレイしました。キャラバンハートもやったんですが、モンスターを強くしすぎて全くレベルが上がらなくなり、ステータスが低くロンダルキア周辺のザコ敵に勝てなくなってしまったので挫折したという過去があります。

基本的にモンスターズシリーズはドラクエナンバリング作品のスピンオフだから買っていたという側面が強いため、今回のピサロが主人公かつジョーカー等の新シリーズではなくナンバリングの続編として出してきたモンスターズ3には強い興味を持ち、購入しました。

ピサロが少年時代の頃の話で、ドラクエ4の前史になるでしょうから、天空シリーズの補完として期待していたからだったのですが、これは半分期待通りで、半分期待を裏切られました。設定面では満足しましたが、シナリオは酷いものだったからです。

 

発売前の段階で、導かれし者たちも登場すると宣伝され、それらの外見が4と同じ時点でだいぶ恐れを抱いていたのですが、なぜか「ピサロが少年の姿のまま」「4本編と同じ時間軸に移行し勇者たちと対峙する」という展開になってしまいました。

しかし、シナリオ上は途中まで完全に4の前の話という前提で進んでいた形跡があり、後から4と同じ時間軸まで進めるという変更があったものと考えられます。

 

明らかに4より前の話として作られていたことが明らかな描写は、以下のとおりです。

 

・ピサロとロザリーの外見

・ランディオル大帝がラスボス(最後までピサロは「魔族の王」にならない)

・パーシヴァルがピサロナイトになるのはロザリーが拐われた後

 

他にもないことはないのですが、明らかに矛盾しているのはこの3点です。

ランディオルはピサロが進化の秘法を使った時点でディオロスと共に倒されたとも解釈できますが、ピサロナイトは擁護できません(勇者たちに敗れても死んでいないことになったのに、ロザリーを人間に連れ去られるのを阻止できていないし)。そしてピサロとロザリー、ピサロだけなら大人に見えないのはデフォルメされて頭身が低いだけで本当は「魔剣士ピサロ」と同じ外見なんですよと言われてもギリギリわからなくもないですが(なのに導かれし者たちは本来のデザインのままなんで結局違和感があるんですが)、ロザリーはキャラが明らかに4本編の守られるだけの女よりもアクティブに造形されているのに、途中で急に4のキャラになってしまうのは無理がありすぎます。しかも魔界の冒険を続けると普通に元のキャラに戻るので、おそらく魔界のシナリオは路線変更より前に作られていたのだと思います。

 

ストーリー的にも、ピサロが急に人間を絶滅させようとするのにプレイヤーがついていけませんし、モンスターマスターの大会が開催されていたエンドールで急に人間の武闘大会が始まりますし(しかもピサロは勝手に参加して勝手に決勝まで勝ち進む)、山奥の村を滅ぼしたのがデスピサロの名を騙ったディオロスだったり、ライアンに倒されたはずのピサロの手先と大目玉が山奥の村を見つけたり、4本編の設定改変自体も酷いものになっています。エスタークが魂が戻らない状態だったから勇者が倒せたというのは分からなくもなかったのですが、それくらいですね。

モンスターズ3本来のシナリオも、4本編のシナリオもめちゃくちゃにしながら無理矢理2つの作品を同じ時間軸にしてしまったので、誰も納得できないストーリーになってしまっています。これで何か良くなっている点が少しでもあればまだ擁護できますが、なにもプラスの効果を生み出していません。終盤で導かれし者たちとピサロたちが共闘したところで、このひどいシナリオの後では何の感慨も湧きません。ゲームの開発者がこれに納得がいっているとは到底思えないため(そうでなければもっと矛盾の少ないシナリオに仕上げているはず)、それよりも強い権力の人間が土壇場でこの路線変更を指示したと思われ、非常に残念でなりません。導かれし者たちの声はあえて収録されているので、その辺に癌があったような気もしますが、モンスターズ3の名前とピサロ主人公で古参を釣っておいてこの内容は本当にひどいです。

 

そもそもモンスターズとしてのゲーム部分は別に企画されていたんじゃないかという節も見られます。甘味楼の魔界が明らかにデザイン的に浮いているのがその理由で、どうみても魔界っぽくないしなんでこういう世界になっているのかの説明もありません(お菓子を無限に生成できる機械がある理由も謎)。なのに今回の新モンスターの大半がこの甘味楼の魔界に生息するお菓子型であるため、最初から甘味楼ありきで作られていたことになります。最初は魔界じゃなくてエルフの世界を冒険する予定だったんじゃないかと言われても納得できてしまいますね。実際、流神殿の魔界はエルフの世界をエビルプリーストが作り変えたものでしたが、これは制作の裏事情そのままなのかもしれません。

そもそも今回シナリオ上新たに登場したボスキャラたちは軒並み配合で作れないのも、モンスターズ部分はシナリオとは別枠で作られていたんじゃないかという考察の強度を上げています。今までのモンスターズシリーズは作中のラスボスとかは作れましたからね。サイコピサロとまでは言わないまでも、せめて究極エビルプリーストくらい作れてもいいんじゃないかと思いました(シナリオ上登場しなくても、デスピサロが作れるわけなので)。4出典のボスなのに卵限定でしか手に入らないキングレオもなんか本来別の形で登場する予定だったんじゃないかと思ってしまいます。

モンスターを育てて配合して強くするというゲーム自体は非常に楽しめたので、それはそれで残念です。PS版1・2以来のモンスターズなので、システムが大きく変わっていて戸惑うかと思ったのですが、オスメスの区別がなくなったりと自由度が高くなったおかげで、適当に配合しても配合前より弱くなることがないシステムであることもあり、割とすんなり入っていけました。

 

まぁ、4本編と時間軸が重ならなくても、一瞬で忘れ去られるロザリーの方言ネタとか盗み概念ガバガバのベネットとか、ツッコミどころはあるんですが、多くの違和感はピサロをドラクエ伝統のしゃべらない主人公として表現しきれていない部分にある気がします。そのせいで、本来はピサロの方が惚れたであろうロザリーに、ロザリーから惚れたようにせざるを得なかったり(助けたピサロを人間を殺したと非難するのにその後即ゾッコンになっている意味がわからなかった)、プレイヤーに選択の余地がなく勝手にピサロの行動方針が決まってしまったりと、シナリオと喋らない主人公の整合性が取れていませんでした。この手の主人公の場合、状況的にほかに選択肢がない状態で話が進んでいくことがほとんどなのですが(他人に何かを依頼される、目的達成のために障害になっている問題を解決しなければならなくなるなど)、そういうことをせずに話の都合でピサロが動いてしまうので、非常に違和感がありました。

一回死んだのにクリア後に何の説明もなく再登場するリュノも、何かの設定改変の犠牲者なんでしょうね。裏ボスであることが決まってからシナリオが改変されたんでしょうか。

エスターク絡みの設定に関しては割とよくできていただけに、他がダメダメすぎるのは残念でした。

 

今回の作品、モンスターズ3というゲームとしてはよく出来ていました。基幹となる設定もそんなに悪くはありません。しかし、どう考えても大人の事情で路線が変わったとわかってしまうほど粗があるシナリオは、擁護の余地がありません。そしてそれは多分、シナリオライターのせいではないのだと思えるからこそ、スクウェア・エニックスという会社に失望するしかありませんでした。