TV番組「プレバト」で有名になった

俳人 夏井いつき さんの本

「瓢箪から人生」を読みました。


国語教師の夏井さんは 20代のとき

ふと本屋で見た黒田杏子さんの俳句が

脳内に突き刺さり、俳句の言葉の世界に魅かれて

俳句をつくるようになります。


昼休みみじかくて草青みたり (黒田杏子)


当時の夏井さんは忙しい中学校教師でした。

授業、給食、生活指導etc時間に追われる日日を思いながら、この時 「草青む」が春の季語と知ります。


夏井さんは、楽しいことも辛いことも俳句の種になるとより多くの人たちに俳句を楽しんでもらうために句会ライブ活動を全国で行なっています。


そして

わずか17音の言葉が、誰かの心の奥に仕舞われていた感情に波紋を広げ堪えきれない思いが涙になることも体験します。


泪より少し冷たきヒヤシンス(夏井いつき)


句会ライブに来ていた姉妹とひょんなことから、ライブ後に遭遇します。このヒヤシンスの句が好きだというその姉が夏井さんに直筆で書いてほしいとお願いするのに、涙が出てヒヤシンスの句を最期まで伝えられない状況になります。

その妹さんが事情を説明され、ご主人を亡くされ涙せずに過ごしていたが、この句が、姉である女性の堪えていた感情の堰を欠壊させてしまったのでした。


私が大好きなヒヤシンスを水栽培で始めた頃、私は元気ではありませんでした。重い荷物は持てなくなり買い物は高校生の娘が学校帰りに買ってくる日々でした。


だからヒヤシンスは私にとっても

大好きだけど少し哀しい…

嬉しいけど少し申し訳ない…

そんな風に気持ちを癒しながらも胸はツンときてしまう花です。


少し前に 神保町で

種田山頭火の作品集の古本を見かけています。

山頭火の句も私には胸に痛みを感じます。いくじなしみたいな弱さと孤独感と、

けれど、山頭火は歩き続けている姿が私には希望の一筋になるのです。


分け入っても分け入っても青い山 (種田山頭火)


夏井いつきさんのこの本を読み、

種田山頭火賞があることを知りました。


受賞者 1回目 麿赤兒(舞踏家 俳優)

2回目  伊藤比呂美(詩人)

3回目  碓井敏樹(ピアニスト)

4回目  夏井いつき(俳人)

5回目  ロバート・キャンベル(日本文学研究者)


なかなか個性派の面々ながら、生身の人間の声を言葉に託していそうな気骨を感じる句の世界を感じます。


私は 花鳥風月の世界に憧れています。

谷崎潤一郎や川端康成が語る耽美な世界には

四季の美しさが人間の心模様と重なり描かれていることにも感動を覚えました。


俳句の世界もまた、季節の移ろいと人の心模様が重なる諸行無常や忘れたいのに忘れられない哀しみが凝縮されているように思えました。


俳句をつくることは、言葉が増えて直情的にならないよう生々しくならないように言葉を削ぎ

選び抜く作業です。


言葉を選び抜く日本語は前後の言葉や

シチュエーションで意味が変わります。


でも、長い文でないから、赤裸々にならず、

後から自分が読み返しても赤面ものにならない気がします。

感情を包み込んで人様の前に晒す…感じです。


あ、これは、日本の折型の文化と通じますね。

神事には神物を和紙で包み献上する日本文化がありますよね。

忌を嫌う日本文化があり包み隠すらしいです。

明確に理解しておりませんが、完全なる陰の禁忌な言葉は言霊の考えからも避けて表現するのかもしれません。